サッカー本 0111
『サッカー13の視点』13人の研究者によるアカデミックサッカー講義
編 者 大串哲郎・山本敦久・島崎崇史
発行所 創文企画
2020年3月25日発行
サッカーを学問というフィルターを通して論じるという視点から出版された本である。この書籍のもとになったのは、上智大学で2017年度に開講された「身体・スポーツ・社会Ⅰ:一流研究者が料理するサッカーアラカルト」という講義である。サッカーを学問として、多角的、広角的に勉強したい人には絶好のテキストである。サッカー好きな研究者が自分の学問領域やフィールドから語る切り口は、サッカーを研究することの楽しさやその醍醐味が味わえる。
1 日本サッカーのアラカルト ~歴史・競技・社会・文化としてのサッカー
大串哲郎(元上智大学教授 スポーツ方法学)
山本浩(上智大学短期大学教授・学長 イギリス文学)
3 ドイツ文化の中のサッカー
粂川麻里生(慶応大学教授 近現代ドイツ文学・思想)
4 サッカーと日本人らしさの言説
5 サッカーが作る「私たち」という感覚
~プレースタイル・「物語」・集合的イマジナリー
6 サッカーの“熱狂” ~2つのルーツをめぐって
7 「熱狂」と「感動」から離れて
落合博(元朝日新聞論説委員 Rradin’Writin’店主)
8 スポーツイベントの特徴と機能について
栗原毅(元東海大学教授 イベント学)
9 演劇とサッカーの身体文化
10 バイオメカニクス研究者からみるサッカーコンテンツ
11 サッカー選手の自信とパフォーマンス・成長曲線
島崎崇史(上智大学講師 スポーツ心理)
12 サッカーに対するスポーツ科学的アプローチ
安松幹展(立教大学教授 運動生理学)
13 サッカー指導者論 ~現場で監督は何をしているのか
小井土正亮(筑波大学教授 蹴球部監督)
難しい事を論じてはいるものの、講義形式なのでとても読みやすい。個人的には筑波大学の小井土監督の章が共感する。僕が漠然と考えているサッカー観に近く、同じことを考えている人がいることにホッとした。小井戸監督は「サッカーは感性や感情が思考や知識よりも比重が高いスポーツである」と論じている。
アカデミックな視点は、未来を展望し正しい方向に導くヒントが数多くある。専門性という部分で学びを深めることができるので、大学というところは良い場所だなと思わせる本である。