ニラニスタ発・蹴球思案処

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『カルチョの休日』

サッカー本 0115

 

カルチョの休日』

著 者 宮崎隆司

発行所 内外出版社

2018年8月5日発行

 

タイトル、表紙、内容と3拍子揃った満足できる本(ついでに価格も)になかなか出会うことは少ない。この『カルチョの休日』は、タイトルに魅かれ、表紙の絵に引き込まれ、本を開くと内容に飲み込まれてしまうサッカー本の中でも飛び抜けている本である。

 

イタリアの日常(もちろんイタリアの日常はサッカーを中心としている)生活での、庶民的な側面を紹介していて、日本のサッカー文化との大きな違いを楽しみながら知ることができる。

 

イタリアでは家族や親戚、友人に男の子が生まれると、誰かが決まってサッカーボールをプレゼントします。

この国には「サッカーボールは最高のおもちゃだ」という言葉があり、人々はサッカーに勝る喜びはないと信じています。映画、テレビ、アニメ、ゲームといった娯楽が次々と生まれてきましたが、サッカーはいつの時代も王様です。

 

著者の息子が6歳からサッカーを始める。所属する街クラブのサッカー、保護者、それを取り巻く人々、そしてイタリアのサッカー環境を、日本人として、1人の父親として見つめる視点が絶妙に良い。

第4章の『イタリアの親とサッカーの距離感』、第5章の『愛情と情熱にあふれるイタリアの指導者』の2章は、サッカーの大国(狂国)の国民性、サッカーに対する造詣の深さが伝わってくる。

 

イタリアでは、サッカーは日本と比較にならないほど大きな地位を占めています。そして百年以上にわたって、このスポーツにのめり込んできたイタリア人の人々は、それゆえに頂点の果てしない高さを知っています。~略~

そしてまた、イタリア人の人々はもっと大事なことを知っています。それはプロになって成功を収めることが、人生のすべてではないということ。~略~

サッカー場は愛するわが子が一番輝く場所だと語る父親たちは、試合へ向かう息子に「がんばれ」とは決して言いません。彼らが言うのはいつだってこの一言です。

「思いっきり楽しんでこい」

 

著者の人生を変えてしまったのは、イタリアが生んだ希代のファンタジスタロベルト・バッジョである。バッジョにのめり込んでから8年後、バジョを代表に呼ぶべきか否かの大論争となり、それがメディア主催の国民投票に発展する。バジョに1票を入れるためにイタリア移民となることを決意する。他の本では知りえることができないイタリアのサッカーが詰め込まれている。読んでおいて間違いのないサッカー本の1冊である。