ニラニスタ発・蹴球思案処

蹴辞逍遥・晴蹴雨蹴

『pen』 中田英寿のニッポン文化特別講座

サッカー本 0068

 

『pen』 中田英寿のニッポン文化特別講座

 

f:id:nirasakishikibu:20200926065605j:plain

発行所 CCCメディアハウス

2020年9月15日発行

 

2020年4月より立教大学経営学部の客員教授中田英寿が就任するニュースを目にした。2020年9月より全14回、30名での集中講義を行う予定である。立教大学で教鞭をとる中田英寿の特別講義を、この雑誌で先駆けて開催してくれた。

 

内容は1限から5限まで「日本酒」「発酵」「工芸」「日本茶」「農業」の5つのテーマとなっている。中田英寿はサッカー界から身を引いて以来、「人生とは旅であり、旅とは人生である」と書き記し、自分探しの旅にでた。そこでたくさんのことを学び、吸収した。そしてアウトプットする場をアカデミックな場所にまで拡大した。

 

日本文化を学ぶことは、これからさらに進化しなければならない日本のサッカーに必要なことである。「サッカー文化」という言葉がある。「どんな条件を満たせば文化になるのか」という視点から考えれば、中田英寿の考える日本文化を応用することができる。

韮崎高校出身で、各世代の代表歴を持ち、日本代表、世界のトップ選手にまで上り詰めた中田英寿の視点は、そのバックグラウンドから見ても共感するものがあり、偉い人が書いた本よりも面白いはずである。たとえ同じことを言っていても、サッカー人である中田英寿が発信すると、また新鮮に思えるし、抵抗なく入ってくる。

 

例えば「日本茶」である。世界では「紅茶」「ウーロン茶」などいろいろな種類のお茶がある中で、日本人が昔から普通に飲んでいる日本茶はどのようなものかを再考させてくれる。器や茶入れ道具、淹れ方まで広げると、奥が深すぎる。

 

オシムが言った「日本サッカーを日本化する」という趣旨は、日本文化の魅力を再発見している中田英寿と繋がっている。世界のサッカーがリアルタイムで見ることのできる現在は、サッカースタイルが画一的になりやすい。そのような状況の中で、自らの民族がどのような民族であるか、どのような文化を培ってきたかを改めて学ぶ必要がある。とっつきやすい面からして、この雑誌は良いかもしれない。