ニラニスタ発・蹴球思案処

蹴辞逍遥・晴蹴雨蹴

『現代スポーツ評論』

サッカー本 0103

 

『現代スポーツ評論 3』

「サッカーらしさ」とは何か

編 集 中村敏雄

発行所 創文企画

2000年11月20日発行

 

『現代スポーツ評論 45』

サッカーから見るスポーツの現在

編 集 有元 健

発行所 創文企画

2022年11月20日発行

 

『現代スポーツ評論』は、創刊から24年が経つ年2回刊行され続けている、知る人ぞ知るといったやや専門性の高い本である。創文企画は、体育、スポーツに特化した本を世に送り続けている優秀な出版社であり、スポーツに携わっている者は、知っておいて損をすることはない。執筆陣は多彩かつ優秀な方ばかりで、多角的な視点からの論評は鋭くかつ的を射ている。

スポーツ全般を論ずる特集で、過去2回サッカーが特集された。発売は日韓ワールドカップ前と東京オリンピック後のタイミングであり、そこでの特集が面白い。「サッカーとは何か」ではなく、「サッカーらしさとは何か」という視点、そしてサッカーの現代性という視点は、サッカーの進むべき未来を良くも悪くも方向付ける。少し前に開催されたカタールW杯の決勝がPK決着だったことは、暗示的にさえ思えてしまう。2冊を読み比べてみると、20年という歳月の流れは、時代と同様、論調が暗くなっている印象がある。

 

スポーツは社会にとって必ずしも必要ではない。だがそれが人々を勇気づけ、人々の生に肯定的な仕方で意味を与える文化として存在していくのであれば、スポーツは社会にとって重要なものであり続けるだろう。もしそうでなければ、それはマネ―や傲慢な国民的プライドの力に支配された堕落した文化となるだろう。

 

本誌はスポーツ研究者だけでなく、日々の生活の中でスポーツに携わっている人々、つまりそれを行ったり、観戦したり、教えたり、支えたりあるいは批判している人々に確実に理解され、かつそうした人々のスポーツの実践に直結し、そこでなにがしかの思考や新たな実践を生み出しうるような内容をもつ必要があります。スポーツが大衆文化であるからこそそれは可能だと思いますし、そうした意味で、本特集が日本におけるサッカー文化、ひいてはスポーツ文化のある部分を現実的に組み替えていく力になればと願います。

 

座学が必要だと感じる時に、この本は大きな手助けとヒントを与えてくれると思っている。