ニラニスタ発・蹴球思案処

蹴辞逍遥・晴蹴雨蹴

リレーショナルプレー

リレーショナルプレー

 

アルゼンチンの優勝で終わったカタールワールドカップから1年が経つ。ワールドカップ前と後では、現代サッカーが(見方も含めて)どのように変化しているのかということは、僕にとってはとても興味深い案件である。ワールドカップの総括を、世界中のサッカージャーナリストや専門家が論じた文章に目を通すことは、実際の試合を見ることと同様に楽しみの1つである。ワールドカップ後に翻訳される世界からの情報は、サッカーを捉える視点、切り口としてとても刺激になる。江戸幕府が倒れ、文明開化された時代の旺盛な知識欲をもつ偉人の気持ちが分からなくもない。

アルゼンチンが優勝したことで、欧州のサッカー重視だった流れがまた変わった。現代のサッカーの新しい潮流が生まれたと言って良い。または南米へ向ける視点が巡り巡って戻ってきたと言っても良い。

ヨーロッパ発の「ポジショナルプレー」から、2023年に新しく脚光を浴びつつある「リレーショナルプレー」という概念が南米発で席巻しつつある。

 

“リレーショナル・プレー”とは何か?~7つの戦術パターンから新たなパラダイムを読み解く~ | ディ アハト (theletter.jp)

 

言葉遊びと言ってしまえばそれまでなのだけれど、ポジショナルとかリレーショナルとか聞きなれない戦術ワードが次々と出現してくることは、サッカー界にとってはとても良いことであると思っている。そしてこのような概念は新しく湧いて出てきた概念ではない。昔からある概念に対して、新しい名前をつけたり、言い換えたりして、既知の現象をあたかも未知の現象として取り上げて定義することもある。ただ戦術という視点で、昔より深掘りしている点、細分化され言語化されているという点は進化している。

なにより、僕のようなサッカー庶民に、このような情報が手元に届くという時代に感謝である。W杯決勝で、アルゼンチンがフランスに勝っていなかったら、このような情報発信もそれなりであったと思う。

 

個人的な意見を述べれば、僕はポジショナル派というよりリレーショナル派である。もっと人間が本来持つ感性とか感情とか直観とか情緒なんかが、入り込んだ方がサッカーのもつ本来の魅力が現れ、深みが増すような気がするからである。「リレーショナルプレー」というワードがこれから日本に浸透するのかしないのか。知的好奇心の赴くままにサッカー座学も真剣に楽しみながらやっていきたいと思う。サッカーの探究は奥深い。

 

【参考】

”ポジショニング”か”コンビネーション”か 現代サッカー戦術論におけるPositionismとRelationismの対立|QuintupleOneDay (note.com)