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『モダンサッカー 3.0』

サッカー本 0110

 

『モダンサッカー3.0』

著 者 アレッサンドロ・フォルミサーノ・片野道郎

発行所 株式会社ソル・メディア

2023年7月26日発行

 

イタリアの若手理論派のフォルミサーノがファンクショナルプレーに関して著した本である。表紙にある通り、「ポジショナルプレー」から「ファンクショナルプレー」である。新サッカー用語が定まっていないために、ファンクショナルプレーとあるけれど、リレーショナルプレーとほぼ同義だと思っていい。

サッカーを「戦術的秩序によって成り立つゲーム」だと捉える概念がモダンサッカーとする本書は、タイトルが「モダンサッカー3.0」である。「1.0」がアリーゴ・サッキの「ライン」という概念を持ち込んだ最初であり、サッキのゾーンディフェンスとプレッシングは、ボール被保持の状態である。「2.0」はグアルディオラのボールこそがゲームの中で時間とスペースを支配する唯一絶対の手段であると位置づけた、ポジショナルプレーと呼ばれる概念である。その解釈の仕方があるにせよ、「3.0」という次元へとサッカーが進化している。

 

近年の戦術の進化に目を向けてみれば、攻撃と守備の区別が消え、ポジションという概念がなくなり、静的システムや配置が意味を持たなくなってきています。

 

サッカーの進化(捉え方の進化)から、ポジショナルプレーのトレーニングと全く異なるアプローチで、トレーニングのメソッドを構築し、提言している。ポジショナルプレーの基盤である3個の優位性(数的・位置的・質的)を発展的に再解釈し、その3つよりさらに上に位置する優位性を上げている。

 

ピッチ上の配置や位置関係がもたらす優位性は、ピッチ上に実際に現れる優位性の一部に過ぎず、しかも決定的な優位性をもたらす要素は別にある。それが関係性であり、機能である。

 

「機能的優位」と「関係的優位」をあげ、毎日のトレーニングの中で感情を共有し共感するという経験を重ねていくことを通して、1つの複雑系として自己組織化が進み、チームが持つ集合的インテリジェンスが強化されていくとある。

 

本書には多くの最先端と思われる目新しい用語や視点(そう思わせる)が詰め込まれている。今年の夏に発売されたばかりで、ファンクショナルプレーという言葉も、これから普及するか忘れ去られていくかは定かではない。

日本という国が誕生して以来、外国からの多くの文化を取り入れて影響されている。それが良いか悪いかは別として現在まで続いている。サッカーにおいては、西洋の文化、思想、情報と100%の輸入国である。まだまだ西洋から学ぶべきことはたくさんあり、背中を追う時代が続くのではないかと考えさせられる本である。