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カタールW杯開幕

カタールW杯開幕

 

サッカー(フットボール)の祭典が始まった。内から込み上げてくる静かなワクワク感がワールドカップにはある。みんなでワイワイと見るワールドカップより、1人静かに観るワールドカップを僕は好む。深夜、または早朝、テレビ画面の前に座って、国の威信を懸けて全力でプレーする選手を目にすると、なんとも言えない興奮と脱力感に包まれる。試合前の国歌斉唱、試合後の予想できない結末は、「とんでもないものを目撃してしまった」という罪悪感にも似た感情を抱くこともできる。その余韻は記憶の奥底に、沈殿物として溜まっていく。勝者と敗者の対照的な姿は、サッカーの価値を改めて確認でき、サッカー(フットボール)の素晴らしさを純粋に味わうことができる。

 

現時点では、アルゼンチンの1-2での敗戦が、ナンバー1の衝撃的な「とんでもないものを目撃してしまった」である。予選リーグでは、カタール、イランとアジア勢が南米欧州の狩場化していたので、サウジアラビアももしかしたらと思っていたら、試合をひっくり返してのビックサプライズになった。

 

イングランドの先制点、追加点も驚きだった。19歳ベリンガム、21歳サカの若い選手がチームを引っ張った。世界最高峰のプレミアリーグで馴染みの選手ばかりで、超豪華メンバーだった。期待される選手が期待通りのプレーをすることは、トーナメントの上に進む上で当たり前のことであり、結果を残せるプレーができることがすごい。

 

オランダ-セネガルもうれしい目撃があった。僕はオランダが好きなので、前回ロシアW杯では見られなかったプレーが見ることができるのは正直うれしい。オランダのベンチを映したシーンがあった。監督のルイス・ファン・ハールの横にダービッツが映し出された。画面を見て「あっダービッツだ」と固まってしまった。ちょっとした衝撃と感動があった。

 

デンマークエリクセンが見られたこともうれしい。昨年のユーロで試合中に突然倒れ意識不明となってからのW杯だった。デンマークも好きな国の1つで、デンマークというとラウドルップ兄弟をいつも思い出してしまう。オランダといいデンマークといい、日本より国土も人口もはるかに小さく少ない国なのに、次々とワールドクラスの選手が出てくることがサッカーへのパワーを感じる。

 

64年ぶりの出場のウェールズもどんなサッカーをするか楽しみだった。ベイルのネームバリューは世界トップクラスである。それでもなおウェールズと言うとイアン・ラッシュを思い浮かべてしまうのは、僕だけだろうか。

 

フランスの試合もしっかりと見てしまった。ベンゼマやポグマ、カンテがW杯にいないとはいえ、豪華メンバーである。アジア勢のオーストラリアが先制したのに驚いたけれど、フランスの攻撃力はそれ以上に驚いた。テュラムが見られたことも安心した。

 

優勝を狙える国のメンバーはもちろん知っている馴染みの名前であり、選手である。そしてスタメンだけでなく、控えメンバーでさえ豪華すぎるメンバーである。そのような意味でもサッカー(フットボール)の祭典だと言える。何かを学ぼうとか吸収しようとか、どんな戦術とかの視点ももちろん否定はしない。それよりもまず、難しいことは考えずにサッカーそのものを純粋に愉しみながら見ることが、ワールドカップを見る秘訣なのかなと思う。