ニラニスタ発・蹴球思案処

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県総体3回戦 韮 崎 - 甲府工

令和5年度県高校総体サッカー競技兼関東大会予選 3回戦

 

結果

5月3日 水 10:00キックオフ GF穂坂

韮 崎 3-0(1-0)甲府

 

10日前に良いところなく負けた相手に、再度挑む形となった試合だった。運を味方につけた試合で、(試合後に)こんなところで運を使わなくてもと思ってしまった。前半立ち上がりのCKから運よく、先制点を奪うことができた。ファーストシュートが先制点となり、畳み込むように追加点を奪って圧倒的な試合展開を期待した。ところが前半はパッとしない内容で、隙を見せればすぐに追いつかれてしまうような不安定なサッカーをしていた。甲府工のファーストディフェンスがしつこく、韮高にストレスを感じさせる守備を徹底的にやってきた。一方の韮高は、先制点を奪ったアドバンテージから、ズルズルと良い流れの雰囲気を失っていった。ぎこちなく、自信のないパスが目立ち、選手個々としては一生懸命にやっていても、チームとして相乗効果を生み出すプレーが全く生まれなかった。その原因はパス回しとパスの質にあった。味方の足元への質の悪いパスと、苦し紛れの思いやりのないフワッとしたロングパスは、がっかりすぎるほどレベルが低いものだった。テンポよいパス回し、タメをつくるパスなど、リズムが生まれず、スイッチが入るパスは見ることはなかった。ポジェッションをしているようで、せざるを得ない状況を作らされ、甲府工に守りやすい攻撃をするような状況を作らされた。よって何かが起こる可能性のあるパスや動きは皆無で、残念な完結性を帯びた攻撃の繰り返しだった。選手同士の連携を見ることは、宝くじが当たるような確率しかなかった。いつ追いつかれてもおかしくない前半を折り返した。

後半も嫌な流れは払しょくできず、韮高の一番の急所を突かれ1-1になるようなピンチも訪れた。運に助けられ、何とかしのぐことができた。飲水タイム後選手を入れ替えて試合が動いた。もっと早くカードを切ってきても良かったように思えたけれど、それも作戦だったかもしれない。甲府工に疲れが見え始め、少しずつコンパクトさがなくなり、DFとFWの距離が間延びしてきた。甲府工の疲れを最大限にすることが前半の選手の役目で、後半フレッシュな選手で勝負をかけようとした作戦と思わせるほど、後半に投入された選手は生き生きしていて、ゴールを目指していた。交代した5人のフレッシュな選手は、消耗した甲府工に対し、縦への積極的な仕掛け、ダイレクト、3人目の動きなど、クリエイティブで観ていて愉しいサッカーをした。前半は相手を消耗させる選手でかき回し、後半は試合を決定づける選手の投入といった作戦だったと思わせるほどだった。甲府工のスタミナ切れと言ってしまえばそれまでなのだけれど、2点目、3点目は、韮高の目指す得点の形からの得点だった。韮高のやろうとしているサッカーが具現化できた得点であったと思う。韮高の層の厚さを感じさせる試合運びであった。監督采配もズバリ当り、期待に応えた選手が数名いたことは、今後の見通しがついたといって良い。

「山笑う」という言葉がある。GFから見える晩春の故郷の山々は笑っていた。新緑がまぶしく、新しい力を感じる季節である。

萌黄色、若葉色、松葉色、裏葉色、柳色は、すべて古来日本の緑色の表現である。たくさんの緑があり、たくさんの表現がある。韮高も多くの緑の選手の集合体である。1人1人個性があり、1人として同じ緑はいない。輝きを失うことなく、チームの中で存在感ある緑となってもらいたい。

韮崎の山々は笑っている。韮高サッカー部も同じように、力強い存在になることができる。そして試合の後で、みんなで笑いたい。