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公園とパン

公園とパン

 

韮高サッカー部のOBである仲間が、韮崎中央公園の道向かいに「公園とパン」という店をオープンさせた。

山梨県内、八ヶ岳エリアでは実力のある店として有名な「野菜パンの店・石窯パン ド・ドゥ」の3店目の店である。2店目は、星野リゾートゾナー八ヶ岳のピーマン通りに店がある。「Boulangerie NODA」(ブーランジェリー ノダ)という小難しい洒落た名前の店である。

「ド・ドゥ」はローカルテレビ、ラジオ、そして雑誌等で紹介され続けているので、一度ならず耳にした店かも知れない。ネット社会なので、検索すればすぐに情報を得ることができる。

「ド・ドウ」は「公園とパン」を販売拠点とするために今年3月に閉店した。10年間営業し続け、多くの固定客とファンをつくった。まだハード系のパンが今ほど受け入れられていなかった時勢に、積極的にハード系パンと野菜パンを売った。野菜パンは店主が野菜ソムリエであり、他店との差別化を図った注目のパンである。

韮崎中央公園前にオープンした「公園とパン」はカフェスペースがあり、ゆっくりとした時間を過すことができる。サッカーの試合が始まる前、終わった後に、絶対に立ち寄ってもらいたい店である。

 

ここまでの話なら、韮高サッカー部のOBがパン屋を出した話で終わってしまう。ネットの記事や情報と大して変わらない。

それなのでニラニスタ用の思わずそのパンを買って、食べてみたい、味を確かめてみたいと思わせる紹介をしたい。

 

店主は僕の同級生であり、小学校の選抜の時から、中、高と一緒にサッカーをやってきた気の合う友である。2人1組の練習の時は、長い年月にわたり必ず2人でペアを組んだ。リゾーナーレ八ヶ岳にある店の名前通り、名前はノダと言う。いつの頃からか分からないけれど、「ウマ」と呼ばれるようになった。ただ暴れ馬のように気性が荒っぽいので、本人に「ウマ」と呼べる仲間は数少ない。現在でも後輩は「ウマ」とは呼ぶことができない。もしそんなふうに後輩が呼んだとしたら、暴れ馬のようになってしまうかもしれない。

そのような若かりし頃の過去があり、初めての店の名前が「ド・ドウ」だったので、誰もが馬をなだめるための「ドウ、ドウ」から生まれた自虐的な店名だと思っていた。

ところが店名の由来は宮沢賢治の『風の又三郎』からだった。八ヶ岳おろしが吹く冬の韮崎では、『風の又三郎』の冒頭がぴったりと当てはまる。

どっどど どどうど どどうど どどう

青いくるみも吹きとばせ

すっぱいかりんも吹きとばせ

どっどど どどうど どどうど どどう

 

それともう1つ。大正、昭和初期の先祖が、宮沢賢治の親友である保阪嘉内から名前を付けてもらったとのことで、何気に宮沢賢治とつながっている。保阪嘉内はノダの家の近くだったこともあり、そのような交流があったようである。現代に受け継がれ、パンも文学の香りがする。

 

個人的には「馬」と「美味い」を融合させて「美味い馬パン」という、野菜ソムリエならではの人参系のパンを商品化して欲しいと願っている。また「馬耳東風パン」とか「馬の耳に念仏パン」のネーミングで子供パンを焼いて欲しい気持ちもある。

現在でもとても馬の合う友であり、気兼ねなくつき合っていて、まさに竹馬の友といった存在である。「人間万事塞翁が馬」ということわざの意味を噛みしめて、味わってほしいパンである。

 

 

人には添うてみよ

馬には乗ってみよ