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新人戦準決勝 韮崎-駿台甲府

新人戦準決勝 韮崎-駿台甲府

 

結果

1月5日 日 13:30キックオフ 山梨学院和戸G

韮 崎 2-1(0-0)駿台甲府

 

記憶に新しいインターハイ予選準決勝の駿台甲府戦。前半のシュート1本、その1点で敗れた韮高だった。韮高を破っての初の決勝進出。準決勝なのに優勝でもしたかのような喜びと記念撮影を目にした。そこから大きく歴史が動いてしまった。駿台は選手権でもその勢いは衰えず、ベスト4進出。新人戦では準々決勝で山梨学院に1-0で退けて4強となった。

冷静に考えることさえできないほどに、駿台甲府をやっつけたいと思うのは正常か異常か。韮高が学院を打ち負かすシナリオも崩されてしまったので、恨み節に近い感情論があり、駿台甲府には意地でも負けてはいけないという哀しいプライドが入り混じった試合観戦となった。

 

前半は駿台甲府をリスペクトせざるを得ない展開となった。学院に勝っただけあって、韮高が全力を出し切らないと勝てないと感じるチームに成長していた。開始早々、ファーストシュートを打たれ、その後もCKが連続し、韮高が受け身に立たされる時間帯が続いた。前半は駿台ペースといってよく、セカンドボールをほとんど回収され、韮高が運よく拾えたとしても次のプレーでほぼパスコースが消されていた。韮高はボールを運ぶことができず、何もできなかったと言って良かった。

飲水タイム前にDFの背後に出されたパスから駿台に決定機が訪れた。シュートはサイドネット外に運よく外れた。そのビックチャンスが決められていれば展開は分からなかったけれど、試合の大局が大きく変わる1つだった。

前半を通して駿台はパスを小気味良く回し、韮高がなかなか奪うことができなかった。我慢の時間が長く続いた。ようやく攻撃らしい攻撃ができたのは25分を過ぎてからだった。前半ラストプレーがCKとなり、韮高のDFが集中を切らさず、試合をクローズさせた。前半は2本のCKとシュート0本という内容で終わった。まさか駿台相手にシュート0とはといった感じだった。

後半は全く違った展開となった。ハーフタイムの韮高のベンチでの指示が大きく効いた。逆に相手のベンチワークが韮高にプラスに作用した。スタッフの経験値は韮高がはるか上だった。

個人的には疲れてきたら駿台は何ができるだろうと思っていた。結果的には駿台は疲れたら普通のサッカーになってしまった。選手は前半ほどのコンパクトさを保てず、DFとFWは間延びしてプレスも甘くなった。それでも駿台はちょっとだけ粘りを見せていた。

このような試合はセットプレーが試合を決めると思われる様相だった。最初のチャンスは後半15分に韮高のCKだった。そこから立て続けにCKとなり、ここで決めたら試合をモノにできると思った。3本目はネットを割ったもののファールがあってノーゴール。CKは点につながらなかったけれど、そこから相手のミスが連続し、韮高が一方的に駿台を追い詰めていった。20分に駿台が耐えきれずにPKを献上。韮高が当たり前に決めて、駿台の息の根を止めた。駿台は1つ1つのプレーが中途半端となり、前半とは別のチームとなってしまった。

30分に左クロスから、クレバーなシュートで追加点を奪い2-0。韮高はフレッシュな選手を次々と投入した。その采配は、疲れた駿台の選手にとっては肉体的にも精神的にも相当堪えたように思えた。個人的に勝手に油断していたら、ミドルシュートを決められ失点。ペナの外からの失点はこれきりにしたい。

韮崎という文字を胸に、プライドを持って闘った選手たちは、見ている者にとっても誇らしく感じられた。苦しい時に何ができるかという視点では、韮高の選手は苦しい時にも普段通りのプレーが出来ていた。もっと言うなら、苦しいときこそ、120%の力を発揮する選手になってもらいたい。

昨年出場していた選手は2名ほどである。それでも交代選手を含め新しく面白い選手が次々とでてくるところは、韮高の強みである。トップを目指し、4部リーグ、5部リーグを全力で闘い、妥協しないトレーニングの姿勢があっての現在である。ユースリーグでの成果が出始めているし、陽の目を見ない時の地道な努力の積み重ねが芽生えるチャンスである。

駿台戦は、いつもの試合より多くの大切な要素が含まれた試合であったと思われる。耐えるべきシーンで耐え、負けてはいけないシーンで体をはり、ミスをしてはいけないシーンでしっかりとやり遂げる。良かったところともっと出来たところがある。負けたままにしておくのはいけないことだけど、勝った試合もしっかりと検証して、次に活かすべきである。何が良くて勝ったのかを再考することにより、次の試合で良い結果へつなげるプレーが多くできる可能性を秘める。

 

 

僕たちが住んでいる現実社会と同じように、フットボールの世界では後から振り返った時に、実は大きな運命の分かれ目――潮目が変わる分水嶺が訪れていたことに気づくケースが度々ある。