サッカー本 0094
『競争闘争理論』
サッカーは「競う」べきか「闘う」べきか?
著 者 河内一馬
発行所 ソル・メディア
2022年3月11日発行
興味深い最新刊である。どこが興味深いかというと、サッカーの切り口(角度)が今までにないところである。今まであったとしても、スポーツの中の1つであるサッカーとして論じられることがほとんどであり、サッカーを中心としてしっかりと論を展開する貴重な本である。
著者は「サッカーとは何か」とうい問いに対し、西洋人と日本人とでは大きくその捉え方が異なっているのではないかという問題提起をしている。
私が明らかにしたかったのは、西洋人、つまり現代サッカーを構築した人々が「わざわざ捉える必要のない前提」であり、彼らが無意識に捉えている、自覚のない前提である。
サッカーというゲームがいかに私たちの社会における文化や美意識、思考法、倫理観、つまり無意識に行うことや考えることと相反しているのかを自覚すべきである。
「サッカーの前提を捉え直す」作業が必要であり、「サッカーとは本来このように考えるべきだ」という議論や思考の出発点を提示して進めている。そしてスポーツを種目ごとに分類し、サッカーは団体闘争というカテゴリーに分類している。読み進めると本の表紙の意味が良く分かる。その分類から言えることは、サッカーが属す団体闘争では、世界のトップに躍り出たことがないことである。東京オリンピックでの各種目の成績を挙げ、分かりやすく説明している。
これほどまでに勤勉で、真面目で、器用で、加えて経済的にアドバンテージのある日本という国が、なぜ「サッカー」というゲームでは勝てないのか。~略
日本サッカーにおける、あらゆる問題の根本的原因は、全てのスポーツを一緒くたに捉え、これまで日本が「競争」や「個人闘争」に分類されるスポーツで用いてきた日本的な倫理観や方法論を、全てのスポーツにおける「絶対主義」としていることにある。
サッカーに対して見識を広めること、知的好奇心を持つことは、そのままダイレクトにプレーそのものに影響する。このような本が日本でも出版され、多くの人の目に留まることは、これからの日本のサッカーにとってプラスである。
ネットでもこの本の内容が見ることができる。著者である河内一馬は、これからも注目していきたい1人である。
【総論】 なぜ私たちは闘う必要があるのか?:Competition and Struggle Theory(競争闘争理論)|河内一馬|note