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『フットボール批評 教養としての現代サッカー』

サッカー本 0088

 

フットボール批評 教養としての現代サッカー』

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発行所 株式会社カンゼン

2021年12月6日発行

 

フットボール批評最新号(issue34)が発売された。思わず飛びついてしまう特集が組まれていて、サッカーの切り口としては斬新かつ新鮮である。「教養としての現代サッカー」とはどのようなものなのか、このようなテーマを掲げ、サッカーを捉えようと試みる面白い雑誌である。

現代サッカーは、未来に向かって加速度的に進化している。以前よりも、求められるものが多様化し、それに加え頭を使うスポーツになった。「サッカーは文化である」と誇らしげに口にする時代は過去のものとなり、この本にある通り、サッカーとは、「文化」である以上に、「社会」なのである。

 

これまで蓄え、培った知識などの価値体系を崩し、サッカーというスポーツを、スポーツとしてではなく、学問として解釈することも大切だと思う。これからはさらにサッカーにも教養が必要になってくる。

 

ボールに寄っていくスライドと、ただ左から右、右から左にズレていくスライドとでは、圧倒的に違う

 

ユニット内を「連動」させて、ユニット外を「連鎖」させる

 

選手が伸びるかどうかは、スキルを伸ばした選手に、そもそもテクニックも備わっていればいい、という確率論になっている

 

サッカーの持つ多様な世界観を、教養と現代サッカーとを絡めて論じている文章は純粋に面白い。日本でも薄っぺらい内容の本ばかりでない時代が到来している。『フットボール批評』に寄稿しているサッカージャーナリスト、ライターの面々は、精悦揃いである。

 

ミケルス、サッキ、アンチェロッティモウリーニョグアルディオラ、クロップと名監督の采配、戦術、サッカーに対する姿勢は、その時代、時代に受け入れられ、称賛された。本にも登場する次世代を担う注目すべき監督は、ユリアン・ナーゲルスマンだろう。まだ日本では、ナーゲルスマンの監督本、戦術本は発売されていない。これからが楽しみな監督であると期待を込めて、勝手に予言しておく。何年後かに、改めてページをめくる楽しみのある内容である。