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『日本代表とMr.Children』

サッカー本 0091

 

『日本代表とMr.Children

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著 者 宇野維正  レジー

発行所 ソル・メディア

2018年11月26日発行

 

 

タイトルそのままの本である。ロシアW杯が終わり、翌19年5月には新元号に変わるタイミングで発売された。ミスチルと平成を懐かしみながら、その時世を振り返ることができる。

平成は1989年に幕開けだった。JFAが2002年のワールドカップに立候補したのが1989年、ミスチルが「Mr.Children」とバンド名を改名したのも1989年だった。

 

「序章 ミスチル世代とは何か?」から始まり、第7章まで日本代表とミスチルを絡めながら「終章 平成が終わった後の日本代表とMr.Children」で締めくくられている。サッカー専門家ではなく、映画・音楽ジャーナリストやライターから見た日本代表の視点がとてもしっくりとくる。2人の対談形式の構成で、日本代表とミスチルが、平成における広い意味での「カルチャー」を引っ張ってきたという大前提から、日本代表論、ミスチル論が展開される。

 

ワールドカップ・ロシア大会での日本代表の4試合がすべて終わった時に思ったのは「ようやく日本代表のミスチル世代が終わったな」ってことだった。

 

ミスチル世代」というのは学生時代からミスチルの音楽を聴いて育った世代ということで、日本代表の精神性とミスチル的なるものは、深いところで分かち難く結びついていると論を展開している。

 

長谷部は長友、香川と一緒にミスチルのツアーに行っていること、3人とも大事にしている曲が「終わりなき旅」であること。槙野もレッズの選手と一緒にミスチルのライブに行ったことをSNSでアップしていたこと。本田は高校生の頃から試合前に「HERO」を聴いてたというエピソードがあること、ザックジャパンの時には、ザッケローニさいたまスーパーアリーナのライブに足を運んでいたことなど、多くのネタが詰め込まれている。

 

桜井の視点からでは、サッカーが好きな理由と聞かれて「つなぐことの大切さ」、「全体を見ること」といつも答えていることから始まり、桜井は名波の息子の名付け親であること、「I`LL BE」は名波に触発されて書いたこと。「LOVEはじめました」では歌詞に中田が登場することなど、サッカー愛を感じられる。

また今では当たり前になってきた都心型フットボール施設を立ち上げている。「音楽とフットボールを通じて様々なコミュニケーションをクリエイトするプロジェクトMIFA設立は2013年である。

 

「第5章 長谷部とはMr.Childrenである」が本書の核心部である。長谷部は、06年以来、ジーコオシムザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチ、西野と18年ロシアW杯まですべての代表監督に召集された唯一の選手である。そして今でも読み継がれている大ベストセラー『心を整える』には、ミスチルの章があるくらい、大きな影響を受けている。

 

日本代表とファン、サポーターの意識の移り変わりをミスチルと絡めながら振り返る内容は、素直に面白い。Jリーグ誕生前後から市民権を獲得して、ポップカルチャーの仲間入りをした日本代表である。サッカー専門以外の人々を巻き込んだ歴史の変遷があっての現在地である。今年2022年開催のW杯カタール大会前に、一読したい。

 

 

 

なぜ日本代表とMr.Childrenなのか? 名波・中田に始まり、長谷部で一体化 | footballista | フットボリスタ