ニラニスタ発・蹴球思案処

蹴辞逍遥・晴蹴雨蹴

EURO2020 そこはかとなく とりとめもなく

EURO2020 そこはかとなく とりとめもなく

 

楽しみにしていたユーロが1年延期されたのちに開催された。浮かんでは消え、やがてきれいさっぱり消えてしまうであろう記憶と、いつまでも忘れることのできない記憶をランダムに綴る。

 

デンマーククリスティアン・エリクセンがグループリーグの初戦フィンランド戦で試合中に倒れた。エリクセンは10年W杯の日本戦に途中出場した。南ア大会の最年少出場選手だった。エリクセンの欠場がデンマークを後押し、決勝トーナメントではベスト4まで勝ち進んだ。イングランドとの1戦は、イングランド初失点となるダムスゴーのゴールがあった。今大会の最初で最後のフリーキックでの得点だった。そして2000年代に生まれた選手の記念すべき初ゴールだった。

GKのシュマイケルは今大会の名GKの1人である。シュマイケルの父の方が僕にとっては印象が強い。マンチェスターユナイテッドの守護神だったピーター・シュマイケルである。親子でデンマーク代表とは偉大過ぎる。

フランスにも親子出場を果たした選手がいた。マルクステュラムである。デンベレが離脱しとはいえ、ベンゼマ、ジルーのベテランからグリーズマン、エムバペと層の厚い攻撃陣の中で出番は少なかった。まだ23歳なので、偉大なる父リリアン・テュラムを超えるような活躍をこれから期待したい。

 

親子2代と言えば、イタリア代表のキエーザが浮かぶ。25年の時を経てユーロ初の親子2代のゴールだった。僕はまだサンプドリアパルマフィオレンティーナ時代の父エンリコ・キエーザのプレーの方が記憶が強い。サンプドリア時代には監督であるマンチーニと一緒にプレーしている。タイトルを獲ったイタリアの監督マンチーニキエーザJrと話をしているところを見た時には、なんとなく感慨深いものがあった。もちろんフェディリコ・キエーザのプレースタイルは大好きだし、準決勝スペイン戦での先制ゴールは、父親と同じ形から得点した素晴らしく鳥肌の立つゴールだった。

 

オランダ代表もかなり力を入れて応援していた。DFのブリントの父親も96ユーロで出場している。どちらかというとオランダ代表の監督で、ロシアW杯を逃したことの方がイメージとして強い。それにしても親子でナショナルチームの代表になるなんて、驚くようなDNAである。

 

親子ではなく兄弟といえば、ベルギーのアザール兄弟だろう。レアルのエデン・アザールは有名すぎるけれど、弟のトルガン・アザールもすごい。ラウンド16のポルトガル戦ではT・アザールの曲がって落ちるシュートで1-0でポルトガルを沈めた。ペナの外、角度ある左からゴール右隅に狙うシュートが個人的には大好きで、キエーザの得点といい、T・アザールの得点と言い、イタリアのインシーニエもそうだった。何度見ても感激する。あの角度からは、やはりラウンド16でのフランス-スイスのポグマの3点目のスーパーゴールもそうである。凄いものを見てしまったといった感じだった。試合を決める得点だったけれど、スイスに追いつかれた3失点目の原因は、ポグマが奪われたからだった。ポグマっぽくてなんとなくうれしかった。

 

戦力で言ったら、フランスは出場国の中でも最強だったと思う。超豪華メンバーで死のグループでのポルトガル、ドイツ戦は興奮した。ラウンド16でのスイス戦は見応えのある試合でPKまで突入した。延長戦、PK戦前のチームとしての姿を見ていると、スイスには負けてしまうだろうなと思えた。エムバペが無得点で終えたのも何か原因があるかもしれない。フランスはチームとして1つになれば強いけれど、そうではない時はもろい(オランダも)。なんかアフリカのチームのようである。

 

ドイツとイングランドイングランドウクライナは眠くなった)は僕の中では、それほど魅力を感じないのでスルーして、ベルギーは一時代の終焉という印象だった。早朝、目が覚めているのに、さらに覚めたようなサッカーをしたけれど、もう世代交代かなといった感じだったので、準々決勝でイタリアが勝った時は大喜びだった。

 

準決勝ではイタリア-スペインが実現した。08、12、16と4大会連続で対戦している。スペインのサッカーは言うまでもなく面白い。スペインのサッカーに対し、対戦国がどのようなサッカーをしてくるのかが楽しみで見ている。スペイン代表はレアルの選手が1人も選ばれなかった。代表での見納め感のある大好きなジョルディ・アルバのプレーは華麗だった。

ユーロでのプレーがオリンピックでも観ることができる。スペインU-23には、パウ・トーレスエリック・ガルシア、ミケル・オヤサバル、今大会ブレイクした18歳のペドリ、そしてイタリア戦では記憶に残るプレーをしたダニ・オルモがオリンピック代表に選ばれている。

 

新鋭の選手が現れる一方で、これで見納めかなという選手もいて、感謝の意味を込めて試合を観た。C・ロナウド(36歳)はその筆頭である。2008年ユーロ大会から4大会連続での出場である。思い出深いシーンはたくさんある。今大会は、走れないと言われたものの、絶対的なエースであることは変わらなかった。ドイツ戦の先制点は圧巻だった。ドイツのCKからのカウンターでは、C・ロナウドはペナの中にいた。そこから全力で相手ペナまで走り、ジョタからのパスからの点を決めた。ジョタからのごっさんゴールのような報道が多く、自陣からの全力の走りからのゴールという評価は残念ながらなかった。

 

C・ロナウドと同年代のペペは38歳。悪童と呼ばれながらも、現在はポルトガル代表の最強DFとして君臨している。ラウンド16のベルギー戦のペペは凄かった。ペペの危険タックルと評価されているけれど、味方がやられると次のプレーで相手を倒し、見方を鼓舞するプレーを体を張ってやるところに激しく同意してしまった。

 

思い入れがあったり、新しく真っ白な目で見ることができたり、たまらない試合がたくさんあった。日本ではマイナーな報道をされていたところが、まだサッカー後進国というところだろうか。

3バックが多い代表国が多く、守備的(5バック的な3バック)があり、前線での数的優位に重きを置く攻撃的な3バックがあり、3バックがまた流行るのかと思えた。オウンゴールも多く、GKの重要さが分かった試合が多かった。GKに素晴らしい選手がいると試合が引き締まる。

 

スペイン-スウェーデンの試合のスウェーデンのラインコントロールは美しかった。ボールを下げたらラインを上げ、右左のスライドは絶妙だった。寄せては返す波のように、または北朝鮮マスゲームのように組織化されていた。

もぞもぞと深夜(早朝?)1時から起き始め、ラウンド16のスペイン-クロアチアでは、ルーニーの記録を破って最年少出場をしたペドリのオウンゴールを見た。シュート0で1点のクロアチアは突き放されるも、脅威のメンタルを見せ、アディショナルタイムに追いついた。延長となり、スペインが驚くような2得点を上げ5-3の結末を迎えた。

すぐに4時キックオフのフランス-スイスが始まり、終わってみれば3-3で延長、PKとなり、2試合で14得点(PK付き)を目にした。気が付けば6時間もサッカーを見ていて7時になっていた。恐ろしくもサッカーの奥深さと闇に引き込まれてしまった日となった。

 

イングランドがドイツに70年ぶりに勝つという歴史的な試合があったことより、何よりもマンチーニ率いるイタリアがビックタイトルを手にしたことが、自分の中では一番良かったことではないかと思っている。多くの仲間にイタリアが優勝後、お祝いのメッセージをもらえたことはうれしかった。