サッカー本 0093
『いまさら誰にも聞けないサッカー隠語の基礎知識』
編 集 サッカーネット用語辞典
発行所 カンゼン
2021年6月28日発行
第9回サッカー本大賞の優秀作品として選出されている本である。ネットによる情報社会の急拡大の影響で、誹謗中傷が大きく取り上げられている中、この本の中身は、現在でいう誹謗中傷になるかもしれない荒っぽい言葉が載っている。使う時には注意が必要な言葉があり、軽蔑語があり、スラングがある。当事者からすれば、まさに誹謗中傷となる言葉でも、その言葉にはユーモアとウィットが盛り込まれていて、よく思いついたなと思える言葉がある。0か100ではなく、隠語が入り込む余地があるJリーグであり、日本のサッカーであって欲しいと思っている。
いつから日本のサッカー界に笑いと皮肉の要素がなくなってしまったのだろうか。
日本のサッカー界に笑いと皮肉があった時代・・・・それはサッカー隠語が数多く生まれて時代と重なる。
いくつかの原因は推測できなくもない。1つは戦術クラスタがSNS上で勢力を拡大し、欧州発祥の戦術用語が支配していったこと。もう1つはJFA、Jリーグが推進する「リスペクト宣言」によって、相手を尊重し敬意を払う行為が当たり前になったこと。
インターネットの掲示板から生まれたスラングは、膨大な量になる。日本はサッカースラング王国であると書かれていて、分かる人しか分からない言葉は、奥行きがあり、味わい深い。
Jリーグのチームを呼ぶスラングは、むかつく一方で笑える。オリ10では、鹿、脚、鯱、犬、鞠があり、主にその後にサポをつける文章をよく目にする。僕が敬意と憎しみを込めて使うスラングは「瓦斯サポ」である。
その他には、田舎、海豚、渦、うどん、馬、雉、北Q、熊、桜、酉、蜂、みかん、麿、栗鼠、みかかがあり、サポーターが自称するときもあるけれど、ほとんどが蔑称であることが多い。揶揄的な言葉では、さっぽこ、ザルッソ大阪、馬鹿島、懐かしむのであれば、サンフレッズ浦島、無冠ターレがある。ネット文化の底辺部分も載せていて、吹田、劣頭、アホ―ター、ここですか?などと列挙されている。
ドメサカのスレや目に付きにくい掲示板、ゴール裏の煽りゲーフラのスラングは、見方を変えれば大きく日本のサッカーに貢献していると思える。2-4川くん、キャバクラ7、モンデナイヨ山形も、サッカー史に残る史実である。
大昔なら「友達なら当たり前」、数年前は「大迫半端ないって」など、その言葉自体は強烈である。そのような言葉を1つ1つ丁寧に解説しているところが、この本の醍醐味である。
個人的にはサッカー文化という大きな視点から見れば、カウンターカルチャーという分野も下々でサッカー文化を支える1つであり、アンダーグラウンドも含めてのサッカー文化なので、必要不可欠であると思っている。そのような意味で、この本は貴重な言葉を収集した素晴らしい本であると思う。