ニラニスタ発・蹴球思案処

蹴辞逍遥・晴蹴雨蹴

根を張る

根を張る

 

冬季北京オリンピックが普通に開催されている。ヨーロッパのリーグでは、多くの観客がマスクもせずに、今までの日常生活が戻ったかのように、興奮し選手のプレーに一喜一憂している。

オリンピックより何より、クラブワールドカップ決勝、パルメイラスチェルシーの試合がUAEで行われた。世界一の瞬間を目にしようと、多くのサポーターがスタジアムに詰めかけた。日本ではそれほど注目されなかったけれど、僕の中では一大イベントだった。選手もサポーターも熱かった。

東の果ての日本では、同調圧力と劇場型のパフォーマンスで、様々な行動が制限されている。子供から大人までたくさんの大切な時間を奪われている。特に成長期の10代の子どもたちは、納得いかない日々を送っているのではないかと思う。

山梨県でも例に漏れず、対外試合、交流試合、部活動、クラブ活動が自粛となったままである。好むと好まざるにかかわらず、世界を引っ張っていく力の原理は、ある場合には、往々にして荒々しさに表象される。時に、正義に基礎を置いた怒りや憤りからくる行動はありである。「正を守りて恐るることなかれ」(Be just and fear not)はシェイクスピアの名言である。

 

とりあえず、今置かれた状況を冷静に考えてみる。草木に例えてみると、今の状況は異常気象である。芽が出てから、大きく伸びなければならない季節なのに、外的状況がいつもと違っている。いつも通りに高く太く、そして葉を多く茂らすことができない。このような状況が長引けば、花を咲かすことも出来なければ、実をつけることも危うい。

何をするべきか。まず考えるべきことは、今できることである。今できること、それは地中に根を深く広く張ることである。大きな風雨に見舞われてもびくともしない根を張ることができれば、例年通りの季節になれば、力強い草木になる。

花や実は多く目に止まるところである。そこにたどりつくには、目に見えない根を張ることである。見えない部分だからこそ力をいれるべきである。根を張ることは今しかできない。ありとあらゆる養分と栄養を吸収するための根を張り巡らした草木は、たとえ見栄えは悪くても強い。逆に根を張り切っていない草木は、ちょっとのことで倒れ、弱さが露呈する。

人間は草木と決定的に違うところがある。心、精神、魂が存在する。種は巻かれ、芽は出ている。自らの意思でどのようにも人生が転ぶ。この寒い時期にしっかりと根を張れる選手が、春から夏、秋までに大きく成長できる。

 

 

上へ上へと伸びぬ日は

下へ下へと根を伸ばせ