サッカー本 0078
『サッカー日本代表が一つの会社だったら』
リストラすべきは本田?カズ?ヒデ?
著 者 光田耕造
発行所 チャンスメディア
2013年11月10日発行
発売を前後するけれど『もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーの「マネジメント」を読んだら』と同様の、スポーツとビジネスの相関性と類似性を横展開した本である。
成功するにはサッカーもビジネスも何かしらの理由がある。サッカー選手では、三浦知良、中田英寿、本田圭佑、長友佑都、内田篤人、遠藤保仁の6人、成功企業としてユニクロ、セブンイレブン、マクドナルド、スズキ、京セラ、無印良品を比較し、物語が展開していく。
何が面白いかと言えば、本のタイトル通り、その設定がユニークである。
架空の会社、サッカー日本代表株式会社において、ある事件が発生した。会社業績を立て直すために6人いる事業部長の1人をリストラすることが取締役会で決定したのだ。カズ、ヒデ、長友、内田、遠藤といずれも超一流ビジネスマンの中から、リストラするメンバーを1人選ばなければならない。
首を切る判断を担うことになったのは岡田社長である。日本サッカーの歴史を会社の歴史になぞらえ、カズやヒデの個々のリアルな実績がそのままサッカー日本代表株式会社の成長につながっている。なによりも選手1人1人のサクセスストーリーを細かく調べ上げ、選手の発言、行動、性格を的確に書いているところはこの本の優れたところである。
カズ、ヒデ、本田、長友、内田、遠藤らの部長陣と香川、川島、今野、吉田、岡崎、長谷部らが会議室に集められた。岡田社長から新しい人事の発表が行われるのだ。岡田社長は無表情とも過度の緊張ともとれる程、感情を押さえているように見える。
岡田社長から発表された新しい人事から漏れてしまった選手は誰かは「ネタバレ」になってしまうので書かないけれど、大体想像がつく。サッカー日本代表株式会社の未来を託す人選は納得がいくし、リストラされてしまった選手は(個人的には納得がいかないにせよ)まあそうかなと思える。最後の一文は高度な推理小説のような幕切れというか、サッカーをしっかりと見ていないと出てこないフレーズである。
「スポーツを題材にし、わかりやすくビジネス成功について解説できないか。この長年の想いを形にしたのが本書です」と著者があとがきで書いている。アスリートの成功要因をビジネスモデルのヒントにするのと同様に、考え方によっては、ビジネスモデルの成功要因をサッカーにも応用できると思える本となっている。