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フェルナンド・ペソア

フェルナンド・ペソア

 

フェルナンド・ペソアと聞いて、すぐにペソアを思い浮かべられる人は、日本人の中では希少種である。マニアックというかレアの部類に入る。どちらかと言うと、どうやってペソアにたどり着いたのかということの方が、僕は興味がある。

 

フェルナンド・ペソアポルトガルの国民的詩人である。ポルトガルでは誰もが知っている(日本で例えると夏目漱石のような)偉人で、20世紀前半におけるもっとも重要な詩人の1人とされている。

 

サッカーに絡んでいない人は、ポルトガルという国に対してイメージの沸きにくい印象がある。現に、フェルナンド・ペソアとの出会いにおいてペソアの先駆け的な四方田犬彦は、イタリア語で翻訳された詩集からの出会ったと語っている。

サッカー好きな人は、ポルトガルは心的距離は近い。近年ではヨーロッパでも有数のサッカー強豪国であり、現在ではサッカー以外でも知名度の高いC・ロナウドを生み出した国である。

 

僕はポルトガルのサッカーが好きである。サッカーが好きというよりポルトガル出身の選手が好きである。ちょっと脱線するけれど、20年も前には、子供にナショナルチームのユニホームを買ってしまったこともある。

もちろんC・ロナウドは偉大な選手である。それにも増して、ポルトガルには魅力的でキラキラと輝くプレーをした選手がたくさんいた。フューゴ、ルイコスタ、デコなどのプレーは鮮明に記憶に残っている。

 

話しを戻して、僕がペソアにたどり着いたのはいたって単純である。モウリーニョペソアの名前を挙げたことからである。モウリーニョが監督として次々と実績と結果を残し、世界のトップトップの監督へと登りつめていく度に、たくさんのモウリーニョ本が出た。モウリーニョは、休日の日やリラックスしたいときには、好んでペソアの詩に目を通しているという話を目にした。

 

サッカー以外の思わぬ面を知ることができ、そこからフェルナンド・ペソアの本を読むことになった。僕はサッカー選手のみならず、アスリートのインタビューや記事では、好きなアーティストや作家に注目してしまうので、そこから知らない作家や芸術家への入口となることが多い。ペソアもその1人である。

 

韮崎の店で偶然に、ある方を紹介されたことがあった。その方は小さな書店を経営していて、ライターでもあった。若い頃にバルセロナに住んでいたことがあったけれど、サッカーとは無縁の生活だった。サッカー選手の名前を知っている程度なので、「ポルトガルの詩人であるフェルナンド・ペソアを知っているか」と聞いたところ、「スペイン語で読んだことがあり、ペソアは好きだ」とのことで、話が大きく盛り上がった。どちらもまさか韮崎の小さな街で、ペソアを知っている人間に会うとは・・・という新鮮で衝撃的な出来事だった。

 

僕が、ポルトガル語の中で一番好きな言葉は「サウダージ(saudade)」である。モウリーニョペソアを読むということは、その詩の中にサウダージを感じるから読むのか、サッカーとは違う次元で何かを求めているのか、いろいろな想像をしてしまう。そのような読み方もありではないかと思う。

サッカーを求心的に突き詰める一方で、サッカーとは別の外の世界が開けることがたくさんある。サッカーのプレーと同じく、顔を上げて、視野を広く確保して、愉しみながら生きていきたい。必ず良いことが待ち受けている。

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