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オシム本 特別番外編

オシム本 特別番外編

 

5月1日、イビチャ・オシムが死去した。哀悼の意を表し、僕自身に与えたオシムの影響を振り返る。イビチャ・オシムの与えた影響はとても大きい。選手のみならず、スタッフ、日本中の指導者、サポーターまで、大きく感化された。マスコミや記者までもが、オシムによって成長した。オシムの影響で日本のサッカーは速度を上げて進歩した。

 

僕にとってのオシムは哲学者だった。「考えて走るサッカー」は革命だった。ウイットに富んだ比喩、示唆的なジョーク、核心を突いた言葉には、深く考えさせられた。オシムによって、今まで以上にサッカーそのものを、そして「考える」という作業を考えさせられた。サッカーへのアプローチの覚醒と道筋を示してくれたと思っている。

オシムを始めて知ったのは、90年イタリアW杯でのユーゴスラビアの監督だった時だった。準々決勝のアルゼンチン戦である。ユーゴスラビア最後の監督となり、W杯後にはリアルタイムでユーゴスラビアという国が崩壊していく姿を見た。

 

2003年、世界の名監督ベスト10の中に入るオシムが、ジフェフユナイテッド市原の監督となった。オシムの注目度が一気にアップしていた。サッカー関係者にとっては注目の人物となった。

2006年、日本代表の監督となった。なるべくしてなったと言える。そこからは日本での知名度はマックスとなった。07年アジアカップでのオーストラリア戦でのPK前に、ピッチを後にする後ろ姿が忘れられない。

 

これまでたくさんのオシム本が発売された。オシムの関連本を入れるとさらにその数は多くなる。サッカーと向き合う上で、オシムの本は手放すことはできない。また生きて行く上においても、オシム本はたくさんのヒントと進むべき方向へと導いてくれる。

 

14日には追悼式典がサラエボで行われた。追悼儀式ではないけれど、部屋にあるオシム本を掘り出して、1つにまとめて本棚に収めた。1番初めに読むべき本はと問われれば、『オシムの言葉』を薦める。2005年に発売された本で、木村元彦の力強い文章が身に沁みる。『誇り』、『悪者見参』に続くユーゴスラビアサッカーの3部作完結編である。2008年に文庫本化された中には、第10章が加筆されている。

オシムから学ぶこと」は、今からでも遅くはない。死後もなお影響力は小さくはないと思っている。困難な状況、先行き不安なシチュエーションに直面した時、多くのオシムファンが考えるように、「オシムだったらどのようにするだろうか」ということを僕も考える。これからも心の中に生き続けるのではないかと思う。