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枠内シュートとイワシの群れ

枠内シュートとイワシの群れ

 

専門的なサッカーの話はやはり面白い。気になったことで、いろいろと思案した2つを記す。ただ僕自身のこれといった結論はいまだ出ていない。

 

「枠内シュート」

シュートは枠を外さないことが良い。枠を外したシュートであれば、それで攻撃は完結する。枠内に飛べば、ミスを誘発するかもしれないし、何かが起こる可能性は0ではない。枠内シュート率、枠外シュートなどデータで細かく見ることができる。試合を観ないでデータを見るだけでは、大きな落とし穴がある。

 

2人のFWがいる。シュートがどちらも20本。データでは1人は100%に近い確率で枠内、もう1人は半分以上が枠外である。注目すべきは枠内に入らないFWである。シュートのねらいは全てゴール隅の上下。最もゴールの入りやすいエリアはゴールの4つの隅である。この隅にシュートを狙った時に飛ぶ、可能性があるスペースを円で描くと、枠内は4分の1しかない。隅を狙うと外す確率は高くなる。狙いを持ったシュートを打っているのであれば、どちらのFWが怖いのかは分かる。トレーニングでも「枠内に飛ばす」のではなく、「ゴールの隅を狙って打つ」という意識が必要だろう。そこを狙って枠を外れるのなら、チャレンジから起きるミスであるので、精度を上げる繰り返しのトレーニングしかない。GKの守備範囲である枠に飛ばしているだけでは、得点の匂いはそれほどでもない。トレーニングに取り組む意識部分で、深く考えさせられる案件である。

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イワシの群れと自己組織化」

ポジショナルプレーを細分化すると「自己組織化」という概念がある。自己組織化を簡単に行っている例がある。誰でも1度は見たことのある「イワシの群れ」である。魚同士がぶつかることなく一定の距離を保ち、方向を変え、群れを成して泳いでいる姿はある種の機能美である。


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結論から言えば、イワシの群れのような動きを、選手が行えば、ラインコントロールは容易になるということである。スライドからラインのアップダウンを意識して行うのではなく、意識下で行う。無意識ではなく、意識下の状況において、ラインコントロールができれば、戦術理解と戦術の実践ができているとみることができ、さらに高いレベルのサッカーに進むことができる。

整然とした大量のイワシの群れは美しい。イワシの群れの研究はサッカーに活きる。イワシの群れの研究は驚くほど進み、かつては群れの中にリーダーがいて中央制御している仮説が立てられた。けれど現在は「複雑系」の研究が進み、このような現象は「局所的相互作用」による簡単なルールで成り立っているとのことである。

サッカーは11人、エリアでのユニットやグループでの戦術にこのような連動した動きはできるはずである。数千匹の魚ができて人間にできないはずはない。チームとしての美しい動きが可能になれば、選手1人では出来ないワクワクするようなチームプレーが出来るような気がする。

 

僕ら人間は自意識は過剰であるが、自覚に乏しい。限定されたサッカーという枠の中でありながらも、学ぶべきこと、実践すべきことがたくさんある。