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『BBB ビーサン』

1月サッカー本
 
『BBB ビーサン
ビール・ボール・貧乏~15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅

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著 者 竹田聡一郎
発行所 講談社文庫
2010年9月15日発行
 
2008年にハードカバーで刊行され、文庫本が2年後に出版された。サッカー本のハードカバーが文庫本になることは稀である。
フリーランスライターの竹田聡一郎の良さを一言で言うと、「文章の軽さ」である。システムがどうの、戦術がどうの、頭でっかちのサッカー論とは対極にあり、筆者のサッカー観が溢れている。
 
本文抜粋
フットボールは文化であって戦争であって政治であって宗教でもある」とかなんとか口角泡を飛ばして語るヒトがいる。たしかにフットボールは文化でもあるし、戦争や政治が背景にあったり、宗教まがいの側面もあるかもしれない。でも、いちいち共感したり反論したりするのはなんだか疲れてしまうから、そういう難しい話はしたくないし、そもそも僕はサッカー馬鹿だからできない。少なくとも僕にとってのフットボールは哲学とか主義とか思想とか、そんな言葉でくくってしまうような小難しいモノではない。
 
サッカーを観戦し、試合後はビールを飲み、昼間は現地のサッカー好きの人にまぎれて、草サッカーをする。イタリア、ウクライナ、ブラジル、ドイツ、南アフリカイングランドで、試合を見ては熱狂し、その土地土地のスタジアムの雰囲気を体感して興奮している文章を読むと、「サッカーは楽しまなきゃいけない」と感じる。
 
旅先で、スタジアムの熱狂的サポーターを見て感じるもの、試合後のパブで酔っぱらったサポーターが歌を歌いだすのを見て感じるもの、得点が入った時の高揚感、そして負けた時のがっかり感。全てをひっくるめて筆者は「あぁ、コレだよな」と思う。言葉にならない「コレだよな」という「コレ」こそが、サッカーの魅力である。
 
(こんなことを言って申しわけないけれど)名著でもなんでもない本ではある。しかし文章を読むと、何故か僕は筆者のサッカーの世界観に惹きつけられる。筆者が書いているようにタッチラインの内側には、熱狂とか、美学とか、芸術とか、怒号とか、歓喜とか、あらゆるものがあるのだ」と。