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追悼 パオロ・ロッシ

追悼 パオロ・ロッシ

 

マラドーナに続き、イタリアの英雄パオロ・ロッシが逝去した。82年スペインW杯でイタリアに2回目の優勝をもたらした立役者であった。

3-2というスコアでW杯の名勝負といったら94年アメリカW杯準決勝のブラジル-オランダとか、最近では記憶に新しい日本-ベルギーとかがあるけれど、なんと言っても82年スペインW杯2次リーグのイタリア-ブラジルの3-2の試合は壮絶だった。イタリアの3得点すべてをパオロ・ロッシが挙げた。パオロ・ロッシが先制し、ソクラテスが同点にして、またパオロ・ロッシが突き放し、ファルカンがまた同点にして、最後にパオロ・ロッシが3点目挙げた。黄金のカルテッドと呼ばれるジーコファルカンソクラテストニーニョセレーゾの中盤の4人は歴代ブラジルの中でも最強の中盤だった。そのブラジル相手にハットトリックを成し遂げたアズーリの伝説の20番がパオロ・ロッシだった。八百長疑惑のために2年間の出場停止明けでのワールドカップで、イタリアを優勝に導き、自らは得点王となった。

プレースタイルは変幻自在で、ゴール前では予想もつかないところに現れてゴールを奪ったストライカーだった。「なんでそこにいるの」という絶妙なポジショニングは感覚的なものであり、その嗅覚は抜群だった。

もちろんゲルト・ミュラーとかマリオ・ケンペスだとか伝説的なストライカーはいたけれど、僕の中では最初に衝撃を受けたゴールゲッターは、パオロ・ロッシだった。個人的にイタリア代表はヨーロッパの中でも1番好きなナショナルチームなので、日本代表より応援する。カテナチオと呼ばれ守備的なイメージのあるアズーリであるものの、決めるところで決めきれる魅力的なFWがいるのもアズーリの強みである。パオロ・ロッシからイタリアのストライカーの系譜をたどると、しっかりと記憶に刻まれたFWの選手が次々に浮かぶ。デルピエロは言うまでもなく、スキラッチインザーギマッサーロ、ジラルデーノ、ディ・ナターレカッサーノシニョーリと、泥臭いゴールでもなぜか芸術的ゴールに見えてしまうプレースタイルがたまらない。敏捷性、ひらめき、器用さそして決定力は、そのプレーを見ていつもゾクゾクとした。トーニやビエリのような力強さはない反面、プレーのしなやかさや自らがもつプレーのイメージは素晴らしく共感できた。そして真似ができそうでできないゴールセンスは独特のものがあった。

生涯、勝敗に直結するポジションでプレーしてきたパオロ・ロッシの晩年はどのようであったろうと想像する。また自分自身もパオロ・ロッシがいなかったらまた違った別のサッカー人生になっただろうと思う。


Paolo Rossi | FIFA Classic Player