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EURO2020 イタリア優勝

EURO2020 イタリア優勝

 

イタリアが53年ぶりにユーロの頂点に立った。僕が初めて目にするユーロ優勝であり、その瞬間をリアルタイムで味わえたことは一生の記念となる。

6月11日(現地日時)に開幕したユーロが、1ヶ月後の7月11日にファイナルを迎えた。7月11日はアズーリが82スペインW杯で優勝した日である。

2000年、2012年ではユーロのファイナリストになったものの、フランス、スペインに頂点を奪われた。今回はイングランドが初の決勝進出。地元ウエンブリーで初優勝を飾ったほうが、全般的には盛り上がるのではという流れだった。

僕の中のイングランドは、ユーロ、W杯と毎回、素晴らしく贅沢なメンバーが名を連ねているけど、今一歩のところで勝負弱く、そのような役柄にはまってしまったようなイメージである。プレミア全盛の現在、セリアA世代としてはユーベやミランインテル、ローマ、ナポリでプレーする意地を見せて欲しいと思っていた。

試合開始後、いきなり試合が動いた。マグワイヤのバックパスがCKになった。超一流選手でも緊張をしているんだなと思っていたら、そのCKから流れるような攻撃に移りファイナルにふさわしいルーク・ショーのゴールが生まれた。

期待を裏切ることなく、イングランドに開始2分で先制された。僕の試合イメージは0-1からの2-1での勝利だった。

イタリアがなぜ好きなのかというと、イタリアには我慢するメンタリティーがあるからである。勝負所に踏ん張り、絶える力が好きである。カテナチオという言葉がある通り、1-0のイタリアは強い。そのメンタリティーはドイツの(最近聞かなくなった)ゲルマン魂に通じるものがあるけれど、アズーリのメンタリティーは質が大きく異なる。苦しくてもハートの奥底ではサッカーそのものを楽しんでいる姿に映る。カルチョの国ならではのDNAとでもいうべき、追い詰められた中でもユーモアを失わない姿に熱いものを感じ、共感する。

劣勢の時のイタリアが大好きで、今回も0-1と開始早々にリードされてからのアズーリを楽しませてもらった。アズーリのスピリッツはそう簡単に折れることはなく、イタリア人気質とでもいう大事な部分がプレーに現れる。不思議と気落ちしていない選手たちの表情は悲壮感が漂う訳でもなく、ゴールを死に物狂いで目指すような雰囲気も醸し出さない。純粋に0-1の状況を受け入れ、楽しんでいるようでさえ思える試合運びは、イタリアの強さである。

交代カードを切るイタリアの交代メンバーもぞくぞくした。後半22分にCKからレオナルド・ボヌッチのゴールで1-1となった。ボヌッチは34歳。同じくDFの要のキエッリーニは36歳。2人を見続けて長い年月が経った。アズーリのDFが脈々と受け継ぐDFの系譜はこの2人にもしっかりと引き継がれ、レジェンドの仲間入りである。1-1のまま延長となり、33試合連続無敗記録を34に伸ばした。

PKはイングランドが勝ったとしてもそれほど悔しくなかっと思う。イングランドのプレーには心打たれたし、アズーリには真似ができないプレーが随所に見られたからだ。やはりフットボールの母国だけあった。とはいえイタリアもカルチョの国である。アズーリにはドンナルンマがいる。PKをどんなに止めても冷静なままのドンナルンマは感情がないのではないかとさえ思える。

2人目のベロッティが止められた時は、2012年のユーロ準々決勝でのイングランド戦のPKを思い出した。2人目のモントリーボが外し、3人目のピルロの伝説のキックがあった。PKは3人目ボヌッチが冷静に決め、ラシュフォードが止められた。あの時とシンクロした。ベルナルデスキが真ん中に決め、サンチョがラシュフォードと同じく止められた。最後のキッカーはスペイン戦で圧巻のキックをしたジョルジーニョだった。これで決まったと誰もが思ったキックはポストに当たってしまった。それでもサカのキックをドンナルンマがまたも阻止してPKが結実した。ドンナルンマはPKを阻止しても表情はいつものままだった。

10人が蹴って、5人しかゴールを揺らすことのできなかったPK物語は残酷だった。イングランドの3人目ラシュフォードは23歳、4人目サンチョは21歳。5人目のサカは19歳だった。スリーライオンズの運命を託すには荷が重すぎたのかもしれない。イングランドの監督サウスゲートも98年W杯でアルゼンチンにPKで敗れていた負の歴史があり、イングランドはPKでは弱いイメージが僕の中ではある。

その一方でイタリアのイメージは、苦しければ苦しいほど持っている力を発揮する。多くの負のパワーをプラスの力に変えるメンタリティーに驚くし、その伝播力は大きい。また試合が始まる前からナショナルアンセムで力をもらえるチームであり、強さと同時にしなやかなプレーが持ち味のプレーヤーが共存している。ユーロの優勝は2006年W杯以来のビックタイトルである。そしてナショナルアンセムを7回も聞けたことが何よりうれしかった。

どうでもいいことなのだけれど、予選リーグ初戦からトルコ、スイス、ウェールズとホームユニは赤だった。決勝トーナメントランウド16のオーストリア、準々決勝のベルギー、準決勝のスペインもホームユニが赤だった。イングランドは白。いろいろと試合に関係ないことを考えるのも、サッカーの愉しみある。

カルチョの国イタリアとこれからも共に生きて行きたい。

Italy England Penalty Shootout - Both fans side by side #euro20 - YouTube