ニラニスタ発・蹴球思案処

蹴辞逍遥・晴蹴雨蹴

未来志向型オールドファンの山梨学院サッカー私観

未来志向型オールドファンの山梨学院サッカー私観

 

山梨学院が選手権のベスト4に勝ち残った。または勝ち進んだ。予想外の快進撃と見るべきか、山梨学院の当然の実力と見るべきかは(そこがサッカーの面白いところの1つなので)個々の判断に委ねる。

 

初戦の米子北戦、2回戦の鹿島学園、ベスト8進出を懸けた藤枝明誠戦、準々決勝の昌平戦と、はっきり言っていつ負けてもおかしくはない闘いだった。接戦を愚直に闘い勝ち上がったことは、選手、スタッフの実力があったと思う以外他にない。取り上げるほどのスーパーな選手がいるわけでもなく、派手さが少ないチームの印象がある。1戦1戦力をつけている訳でもなく、チームとしての総合力、層の厚さがどちらかというと目立つ。

 

オールドファンとしては、2回戦の鹿島学園茨城県代表との試合に注目した。関東勢との対戦は、全国津々浦々に実力が分散化したとはいえ、見応えがある試合をする。久しぶりの茨城県代表との試合だな~と思い、ざっくりと思い返しても、平成の時代に選手権で茨城県勢と対戦したことはなかった。昭和の時代の選手権では(記憶が鮮明なので)、韮崎-古河一の対戦が2回、東海甲府-日立工がある。80年(S55)第59回大会準決勝の試合は、韮高はPKで惜しくも敗れ、古河一は優勝した。

その前は初の首都圏開催である76年(S51)第55回大会の2回戦、韮崎-古河一である。その時も0-2で負けている。

未来志向型オールドファンから見ると、令和の時代になって、山梨学院-鹿島学園という(古豪の高校からすれば)新興勢力同士の対戦が実現し、山梨県勢が初めて選手権で茨城県代表に勝ったことはうれしい。新しい時代が到来していることが、目に見える形として実感できる。

 

3回戦の藤枝明誠戦もオールドファンからすれば、歴史的に深みのある試合だった。やはり茨城県代表と同様に静岡代表とは平成の30年間では対戦していない。昭和から比べるとサッカー勢力地図を大きく塗り替えた現在であるけれど、静岡のブランド力は健在である。前回大会優勝の静岡学園を倒しての静岡代表ということで大会前から藤枝明誠は注目を集めた。別の意味で山梨-静岡の対戦を楽しみにしていたので、山梨学院がPKで藤枝明誠を倒した時は、82年(S57)第61回大会決勝戦の仇をとったと思った。清水東に1-4で敗れて以来、38年ぶりの勝利なので(別の意味で)横森総監督もうれしかっただろうと思う。個人的にはスタンドで記憶にとどめておきたかった試合である。

 

準々決勝の昌平・埼玉県代表もオールドファンからすれば見逃せない試合だった。埼玉県代表とは、静岡県代表と同様、悔しい記憶の残る試合がある。忘れることが出来ない81年(S56)第60回大会の韮崎-武南の試合である。韮高は優勝候補ながら0-2で敗れ、武南に初優勝を持ていかれた。埼玉県もこの優勝以来、選手権での優勝から遠ざかっている。サッカーが濃縮されている土地なので、優勝候補として呼び声が高いJ内定4人を擁した昌平には、並々ならぬ期待をしていたと思う。

勝手ながらの感想で、山梨学院は昌平に勝ってしまった。平成の時代、92年(H4)に韮崎工-武南の対戦が実現していて、0-2で敗れている。横森監督は韮高、韮工の監督時に、選手権で武南に2連敗。今大会で埼玉代表に初勝利となった。山梨県代表が埼玉県代表に選手権で勝ったという記録は、戦後初である。

山梨と埼玉のサッカーの歴史は古い。首都圏開催前の戦後の対戦は69年(S44)第48回大会に、韮崎-浦和南が準決勝で対戦していて、0-3で負けている。その浦和南は優勝、韮高は3位決定戦で敗れている。この時代の参加校は16校である。さらに遡ると、55年(S30)第34回大会でも準決勝で対戦していて、浦和に1-4で敗れ、浦和は優勝している。

埼玉県勢との初対戦は、戦前の36年(S11)第18回大会、旧制韮崎中-浦和師範である。旧制韮崎中は準決勝で浦和師範と対戦し5-2で勝利を飾った(決勝で広島一中に3-5で敗れている)

学院-昌平の試合は、やはりスタンドでしっかりと記憶に刻みたい試合だった。観客が入ることができれば、第1試合山梨-埼玉、第2試合千葉-新潟と関東3チームだったので、とてつもない観客動員ができたと思う。

 

めくるめく想いがある中で、トーナメント表を見ることは面白い。準決勝の相手は新興勢力著しい帝京長岡である。山梨県代表と新潟代表とは選手権大会初対決である。オールドファンからすれば、市立船橋が勝ち上がってきて欲しかったけれど、未来志向で行けば令和の時代の先駆けとなるフレッシュな対戦である。時代の移り変わりと共に、山梨のサッカーの顔は韮高から学院へとすっかり変わった。記念すべき100回大会を前にした99回大会は、さらに新しい時代を予見することができるかもしれない。残り3試合をしっかりと観てみたい。

 

自分が属する組織や地域スポーツ集団や個人、あるいは自分が好ましいと思うスポーツ集団や個人を応援するのは、きわめて素直な個人的感情の発露である