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『PITCH LEVEL』

サッカー本 0066

 

『PITCH LEVEL』

例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法

 

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著 者 岩政大樹

発行所 KKベストセラーズ

2017年9月25日発行

 

個人的な書評としては、過去5年でたくさんの現役Jリーガー、元Jリーガーが書いた本の中で、ナンバー1の本である。著名なサッカージャーナリストたちの視点とは異なり、常に選手目線であり、極端に言えば岩政本人の独自の目線である(本ではそのことが断りを入れて書いてある)。まさしくタイトル通り、「ピッチレベル」である。

 

どこが面白いかというと、1、分かりやすい論点で書かれている。2、何気なく使うサッカー用語に対しての疑問と見解。3、サッカーの言語化。ちょっと思いつくことのできないサッカーの表現がある。これは日本のトップレベルでやってこないとできない表現で、またその表現能力に長けている。

 

まえがきで「僕をあまり考えてプレーしていない情熱的な選手と思う人が多く・・・」と書いているように、僕もその1人で現役時代の岩政のプレーは知性を感じると言うより、情熱的であった。ところがこの本を読むと、サッカーのプレー1つ1つを理詰めで考えた知性を、さらに大きい情熱で覆い隠したプレーだったことが分かる。

 

結局のところ、良い本か悪い本かの価値基準は、読んだ本人が共感できるか否かであり、そういった意味において、この『PITCH LEVEL』は僕のサッカー観と多くを共有する。細かいプレーで言えば、「跳んで、ヘディング」ではなく、「跳ねて、空中で待って、ヘディング」というイメージ。DF目線ならではのストライカー観、選手のプレー見る時の(過去も含めての)視点などはほぼ100%共感できる。

 

僕はそれまで、プロになる前を含めて、優勝がかかったような大事な試合では、あまり結果を出せずにいました。いつも勝負所と言われるときに何をすればいいのか悩んでいました。しかし、書いた通り、勝負所とは、その時の自分ではなく、それまでの自分が表れる場面なのです。いや、むしろそれをよりごまかすことができない場面と言ったほうがいいかもしれません。

つまり、大事なことは、日々の取り組みであり、どんな毎日を過ごしてきたか。それが勝負強さに繋がるのだと考えるようになりました。~略~

 

では・・・。

勝者のメンタリティとはどういうメンタリティでしょうか?

勝者とは、大事な試合とそうでない試合を区別する人でしょうか?

「いつもより大事な試合」があるということは、「いつもより大事ではない試合」があるということです。勝者のメンタリティを備えた選手とは、そうやって自分で勝手に試合に優劣をつけたりせず、どんな試合も勝つためにプレーできる選手だと思います。だから僕は、勝負強さとはそうしたメンタリティを持ち続け、日々の取り組みをしっかり続けることができたときのご褒美のようなものではないかと思っています。

 

この本は当初、SNSでの発信であり、現役Jリーガー必見のサイトであった。おそらく「ピッチレベル」であるが故に、サッカーをしたことのない人には分かりづらいのかもしれない。もっと評価されて良いと思う本であるけれど、逆に掘り下げすぎている点が、足かせになっているのかもしれない。もちろんサッカーを本気でやっている選手は必読書である。