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『勝利を求めず勝利する』

サッカー本 0051

 

『勝利を求めず勝利する』
 欧州サッカークラブに学ぶ43の行動哲学

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著 者 ラインハルト・K・スプンガー
訳 者 稲吉明子
発行所 英治出版
2010年4月30日発行

 

この本は、「サッカーを通してビジネスマネジメントを学ぶこと」を目的とした本である。序文で祖母井秀隆さんが書いてある通りである。

「サッカーは人生の縮図である」と、よく言われる。サッカーと生業とする監督や選手のみならず、熱心なファンたちからも聞こえてくる言葉だ。私が敬愛するイビチャ・オシム監督も、「人生のすべては、サッカーから学ぶことができる」と常日頃、口にしていた。
 確かにサッカーのゲームの中で起こる問題は、人が生きていく上で直面する問題と似たケースが多い。対処すべき問題は、フィールド内のことに留まらず、勝ち負けの結果や周囲の反応なども含めて、人生の問題を解決することに通じるものがあるように思う。

また、サッカーがビジネスの世界から注目される理由の一つとして、「ビジネス環境の急激な変化」があげられる。現代の企業が挑まなければならないことは、実はサッカーの世界では、はるか昔から実践されてきたことである。

僕が社会人になって働き始めたとき思ったことは、企業というものはサッカーの組織と似ているなということだった。「今、何をしなければならないか」、「周りがどのような状況か」、「コミュニケーションスキル」という簡単なことから、プロジェクトを達成するための「チームの在り方」や「目先の結果かプロセスか」とか、「信頼関係」や「価値観」そしてリーダーシップなど、似たような状況が、サッカーをしていた時にもあったな~と思った。
そして現在も、企業で起こっていることをサッカーの現象として捉えれば、様々な案件が簡単ではないにせよ、打開できる筋道を得ることができる。

 

そういった意味において、この本はサッカーをやってきた人間は、今までのサッカー体験を踏まえて、仕事の取り組み方のヒントになる。逆にサッカーをしてこなかった人でも、新しい視点のアプローチとして良い本ではないかと思う。

企業=サッカーにとっての、「成功」、「フェアープレー精神」、「グローバル化」、「女性の参入」、「ライバル」、「情熱」、「育成」、「アイデンティティ」、あらゆることが43の行動哲学から書かれている本である。

企業とは団体スポーツのようなものだ。仲間が必要で、問題はみんなで解決し、よい時も悪い時もともに過ごす。その中で、自分が「ボール」を持っていないとき、つまり自分と直接関係ない仕事であったとしても、仲間をフォローできるかどうかにかかっている。
 ボールを持っているときのプレーは一騎打ちで勝負が決まり、ゴールゲッターが勝敗を決めることもあるだろう。しかし、結局はボールを持っていないときのプレーが試合を制するのだ。