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『育成年代』

サッカー本 0055

 

『育成年代』

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著 者 原田大輔

発行所 東京ニュース通信社

2019年12月16日発行

 

12月に発売された新刊である。本の帯紙にある通り

日本の高校年代のサッカー競技人口は約17万人。そのうちの99%が高体連のサッカー部に所属している。Jクラブユースでプレーしているのはわずか0.8%のエリートたち。日本サッカーの将来を担うのは「メンタルの高体連」か「技術のJクラブユース」か。

第1・最終章が日本サッカー協会、第2・3章が高体連、第4・5章がJクラブアカデミー、第6章がヨーロッパと日本ユース年代の比較と、とても分かりやすく構成されている。

この本にあるデータから見ると初めてワールドカップに出場した1998年フランス大会では、呂比須ワグナーを除き全員が高体連出身の選手だった。20年後の2018年ロシア大会では、Jクラブユースは半数の10人となっている。これから先はJクラブユースの選手が、日本代表の多くを占めることになっていくことは予想できる。

 

2019年11月現在のデータ

高体連 4038校 16万2397人

クラブユース 124チーム(Jクラブユース55チーム) 3384人

 

Jクラブユースの目的は、1人でも多くのプロサッカー選手の育成を目的としている。「第1目標に人間教育に重きを置いています」なんていうJクラブはその存在意義が問われてしまう。

一方で高校の部活動は、プロサッカー選手の育成という目的があっても、あくまでも高校の部活動の範囲内での活動となる。部活動はあくまでも学校教育の延長線上にあり、指導者も先生である。

 

ユース世代の2軸(高体連、クラブユース)の存在は世界に類を見ない。そういった意味において、ユース世代の過去から現在の歴史的流れ、そして未来の展望を自分なりに整理するには、この本は最高の良書である。

 

最後にあとがきを抜粋する

選手には、環境や現状に甘んじることなく、前進してほしいと思います。Jリーグのユースに入ることが、強豪校に入ることがゴールではありません。高校を卒業した後も、プロになった後も、それこそ社会人になったあとも、あなたの人生は続いていくからです。本書を通じて多くの指導者から話を聞いて感じたのは、成長できるかどうかは選手自身の力だと思ったからです。そして、選手が前を向いたとき、指導者はグランドで成長するヒントを与えてくれるはずです。