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『静学スタイル』

1月サッカー本
 
『静学スタイル』 ~独創力を引き出す情熱的指導術

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著 者 井田勝通

発行所 カンゼン

2015年12月17日発行 
 
僕が尊敬し、敬愛する指導者の一人、井田先生が本を出版した。この本を予約していたところ、3日も前に手に取ることが出来て幸せを感じた。そして一気に読んでしまった。次のページをめくることがもったいない本に久しぶりに出会った。
 
日本全国に井田先生のサッカー観に魅かれる指導者、ファンがいると思う。僕もその一人である。山梨でも井田先生のサッカー哲学に魅かれ、自らの息子を地元の韮高や県内の私学に進学させず、静学にサッカー留学させている方がたくさんいる。そのことで過去はいろいろな問題もあった。しかし周囲の誤解や不評を買ってでも、静学でサッカーをさせたい。その気持ちは痛いほどわかる。井田先生のサッカー思想・哲学に惚れることは、無理のないことである。それくらい素晴らしく共感できるサッカーを静学はする。静学は自らの持つ確固たる哲学を具現化する数少ない高校である。
 
運の良いことに、韮高サッカー部はほんのちょっと静学と交流がある。この間も静学にトレーニングマッチに行ってきたと聞いた。また数年前は静学の卒団記念試合の対戦相手に光栄にも選ばれた(韮高の卒団パーティーとは質が違う)。韮崎サッカーフェスティバルにも招待チームとして来ていた。
本のタイトル通り「静学スタイル」は、見ている者はもちろん、対戦チームの選手も衝撃を受けるはずである。
 
本の構成は3章である。シンプルで分かりやすい。
第一章 指導力
第二章 技術力
第三章 人間力
 
(誤解を恐れずに綴るけれど)おそらく静学のサッカーに貫かれているポリシーの周りには「理不尽」が存在すると思う。現代の学校生活、部活でもなくなりつつある理不尽。しかし人間が生きていく上でつきまとう理不尽さはなくならない。本の中には「理不尽と思えるものに価値がある」というセンテンスがあり、その中に「子育て5か条」がある。サッカーという枠にはまらず、またはサッカーを中心にして、そこから派生する人生の事象について語られるこの本は、僕にとってある意味、啓示的である。自己啓発書としても読める内容になっている。(サッカーを知らない人が読んだら、どんな感想を抱くのかなとも考える)
 
このような本を読むと、もっともっとサッカーを勉強しなければと痛切に思う。サッカーを通じて、人間とは、人生とは、生きるとはという命題にまで踏み込んでいる本であると思う。アフォリズムにあふれ、ある意味宗教的でもある。それくらい井田先生の強烈な個性が出ている本である。