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『スポーツ哲学者と共に考える「みんなのサッカー幸福論」』

サッカー本 0114

 

『スポーツ哲学者と共に考える「みんなのサッカー幸福論」』

著 者 島田 哲夫

発行所 Days ブックス

2021年10月25日発行

 

体裁は、本というか、大学の授業で使用するサブテキストのような、冊子のような本である。またスポーツ哲学者の文章だけあって、模試に出てきそうな内容と表現であり、優しく誰でも理解できるような感じであるけれど、説いていることはシンプルな故に難しいと感じる。「スポーツとは何か、サッカーとは何か」を考える「きっかけ」を作ることのできる本である。

この本の特徴がもう1つあり、東京オリンピック後に絡めた内容があり、コロナ渦に書かれた内容であるので、時代性という部分でも興味深い考察がされている。

 

現在の状況下であっても、いやこのような過渡期の状況下であるからこそ、哲学する目的を貫徹しようと決意するならば、コロナ前、コロナ渦、コロナ後という三つのフェーズにおいて、「サッカーとは何か」と哲学し、三つのフェーズに共通する、あらたな概念を生み出し、世界の見方を変え、この状況下を超克する必要があります。

 

著者は「サッカーは虹の架け橋である」と言い、多様な人びとが橋を渡り、「何か」と「何か」を結び付ける役割を持つと言っている。同時に「サッカーは人の心に豊饒さをもたらす華ではないか」とも言い、サッカーが人々を魅了され続けることを哲学的に考察している。

「サッカーとは何か」を哲学という側面からアプローチすることも必要だと思わせる本となっている。

 

「哲学」は、これまで「当たり前」だとなんの疑問も抱かなかった事象や行為や心理に、「それは一体なんだろうか」、「それは一体なぜ起こるのか」、「それがもしなくなると、どういうことになるのか」、「それはなぜ生まれたのか」、つまり「~とはなにか」という問いを自分自身で発し、その解を自分自身の思考の力で得ようとする営為なのです。

 

ここ近年、考えること、考えなければならないことをより求められるサッカー界である。試合前、試合中、試合後、トレーニングにおいても、リアルタイムで、またその状況後においても、「考えること」が求められる。「考えること」自体、身につけなければならない能力となっている。読み方によっては、多くの示唆を与えられる内容となっている。