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ふじさくらとU-3フェス

ふじさくらとU-3フェス

 

平成の時代が始まった頃に、韮崎中央公園で、今ではなでしこジャパンと言われている女子日本代表が合宿をしたことがあった。まだまだ女子サッカーがメジャーになっていない時代だったので、練習見学は今では考えられないくらいひっそりとしたものだった。

平成最後の年に、山梨県初の女子サッカーチームとしてFCふじさくら山梨が誕生した。令和の時代の今年になでしこリーグ2部に昇格した。そのFCふじさくら山梨がホームの郡内を初めて離れ、国中初のトレーンングマッチを韮崎で行った。その手伝いをしてきた。恥ずかしながら、FCふじさくら山梨の試合を生で見るのは初めてで、しっかりとしたサッカーの試合だったという率直な感想である。

FCふじさくらの中に絶妙なファーストコントロールができる選手がいた。ファーストタッチの柔らかさ、自分の思った場所にコントロールできるトラップ技術にはほれぼれした。試合を通してブレることのないボールコントロールをしていたので、視野の確保はもちろん状況判断の選択肢は多かった。またミスパスはなく、味方に100%に近い成功率だった。男女に関係なく見習うことのできるしっかりとした技術だった。

【ご報告】韮崎市ふじざくらサッカーフェス2023を開催(11月19日) | FCふじざくら山梨 (fujizakura-sc.jp)

プレー以外のオフ・ザ・ピッチ、準備、片付けなど2000年頃のVF甲府を見ているような錯覚もあったりした。トレーニングマッチだったので、高校・大学時代のサッカー仲間との再会を両チームの選手が喜んだり懐かしんでいて、良い雰囲気があった。

 

数日後、同じ韮崎中央公園で第50回韮崎市サッカー祭りが開催された。芝生広場では第12回U-3サッカーフェスティバルが開催された。U-3の親子100組が参加したイベントで、キャンセル待ちがあるほどの人気のあるイベントである。関係者が言っていたけれど、応募を上回る集客のあるイベントは、山梨ではめずらしいとのことである。そしてU-3というカテゴリーは日本サッカー協会では活動をしていないので、全国でもめったにない取り組みとなる。

多くの親子がボールをツールにして楽しんでいた。笑顔と笑い声と歓声が常に会場を包み、サッカーの違った一面を目にすることができた。

 

短い期間で、サッカーを「する人」「見る人」「支える人」が凝縮された風景を見ることができた。単なる競技スポーツという枠ではなく、世界中の人々が共有する文化としてサッカーを捉え直すことができた。サッカーの魅力とは何なのだろうという素朴な疑問や、なぜ人は丸いボールに興味を持つのか、また丸いボールを掴んだり、投げたりするのではなく、なぜ蹴るのか、それは人間の本能的なものなのかなど、色々と考えることが浮かんだ。韮崎とサッカーを結びつけたならば、地域におけるスポーツの社会的な存在意義や、地域のアイデンティティみたいなものを、明確にしなければいけないと思えたし、地域の発展に貢献できるポテンシャルがサッカーにはあると感じることができた。またサッカーが地域に根ざしたスポーツであること、子供たちには子供たちがもつ能力を引き出すことができるのがサッカーであることなど、とりとめもなくたくさんのことが浮かんだ。

普段、あまりにも競技スポーツのサッカーにこだわり、勝ち負けに一喜一憂し、勝つことが全てであると思ってしまう試合ばかり見てきたので、肩の力が抜ける視点は、サッカーの奥深さと多角的な広がりを再確認することができた。サッカー(フットボール)について、思案するというより考察し、より深く掘り下げる作業は、時間はかかっても無駄ではないと思える。