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選手権準決勝観戦

選手権準決勝観戦

 

第102回全国高校サッカー選手権大会山梨県大会の準決勝、山梨学院-日本航空の試合を観戦してきた。

一言でこの試合の感想をまとめるならば、

「努力する才能」は「才能」に優る

と言った感じだろうか。才能あふれる、魅力的なプレーをする学院に対し、劣勢さを感じさせない航空の1人1人の選手は、最後まで諦めない努力する才能を持ち合わせていたと思わざるを得ない試合内容と結果となった。

シュート2本で最後の最後でゴールを奪い、退場者を出し、アディショナルタイム7分を強い気持ちで乗り切った航空のチーム力は、観ていて感動した。もちろんゴールをした瞬間は、気迫あるゴールに興奮したけれど、1点を奪ってからの航空の気持ちの入った冷静なプレーは、これまで努力してきたプロセスが結果として現れた時間帯だった。航空の選手に才能がないわけではなく、持ち合わせている才能を開花させる努力する才能が学院の選手よりあったと思える。チームが1つにまとまった時の強さを目の前で見ることができ、改めてチームが1つにまとまるということ、一体感の凄みを味わうことができた。航空という高校は、春頃はそれほどでもないと思えていて、それでいてしっかりと選手権に強いチームとして仕上げてくるところは、毎年ながらそのすごさを感じる。

学院はジュニアユースの頃にうらやむほどの才能を持った山梨県内の選手が、誰1人ピッチに立つことができないくらいに選手層は厚い。そして学院のスタメンは3年生は4人だった。CPを除けば中心選手は2年生で、ルーキーリーグを全勝優勝しただけの駒が揃っていた。それでも航空DF陣がルーキー得点王の選手をしっかり押さえ、将来が楽しみなMFを自由にさせなかったことは、まだまだ航空の試合を見てみたいと思わせた。選手1人1人を見れば、学院は圧倒的な戦力を保持している。(例えは悪いけれど)ロシアとウクライナくらい韮高とは開きがあると思われる。常に学院を倒し全国に進むことを考えて、スカウティングをしてきた仲間と一緒に見ていたので、何番がエスパルス出身だとか、秋田だとかあすみ、F多摩だとか、プレースタイル、ストロングポイントはこれこれだとか、情報を与えられながら観戦することができた。航空も相当に学院対策は念入りにしてきたと感じられた。

インターハイ準優勝の桐光学園が予選で負けるということは、取り立てて驚くことがないように、学院の敗退もそれほど驚きはない。サッカーは何が起きてもおかしくはなく、試合までの積み重ねが一番大切である。

韮高は小瀬のピッチでプレーすること、選手権ベスト4の経験者が誰もいなくなってしまった。経験値はとても重要であり、経験しているのとしていないのとは大きく異なってくる。トレーニングを無我夢中にするのも否定はしないけれど、選手権決勝を潔く観戦して、心に焼き付け、悔しさをバネにトレーニングに打ち込むことも1つの動機付けである。

 

プログラムを見ても分かるように、そしてバックスタンドの応援者にあいさつをするスタッフを見ても分かるように、圧倒的に少ない航空が勝利するという数の力を覆す試合を演出した。選手、指導者共に、「努力する才能」は「才能」に優るのである。