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『サッカーのすすめ』

サッカー本 0058

 

『サッカーのすすめ』

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著 者 岡野俊一郎

発行所 講談社

1968年7月30日発行

 

以前から『サッカーのすすめ』を手元に置きたいなと思っていたら、ふとしたきっかけで、古典的名著を手に入れることができた。我が蔵書のサッカー本の中で1番古い本となり、第1級のお宝本となった。

 

僕が生まれる以前に出版された本で、著者の岡野俊一郎が生まれて初めて書いた本ということでも価値があるけれど、この本の価値は、日本代表が銅メダルを獲得するメキシコオリンピック直前に書かれたという時代性ではないかと思っている。

僕のサッカーのバックグラウンドとして、ダイアモンドサッカーの岡野俊一郎の解説がある。やさしさとサッカー愛にあふれた鋭い洞察力と切り口、そして語りのトーンは今でも僕の中に存在している。その語り口調そのままに、この本の文章は「です」「ます」調であり、人間性あふれる名文であると思っている。書き始めもうっとりとするほどサッカー臭がなく、ソフィスティケートされ文学的である。

 

はじめに

過ぎ去った青春の日々を思い出す時、そこになんらかの形でスポーツが入り込んでいない人はいないのではないでしょうか。そして、スポーツに没頭した瞬間の純粋な喜びは、後々までも生きる力を与えてくれるほど大きなもののように、私には感じられます。サッカーという、スポーツの中の一種目に熱中している私も、サッカーを通じて、多くのことを学ぶことができました。

 

 

第2章「苦しかった道」では、クラマーさんの話、東京オリンピックの話、日本リーグ誕生の話が沁みる内容となっている。

第3章「躍進する日本サッカー」、第4章「海外遠征記」での、ワールドカップ、プロ化への熱い夢は、日本サッカーの現時点を思えば、恐ろしいほどの夢物語である。

 

もちろん、今の時代となっては古さを感じるところもある。けれど時代性を考えた場合、その時代の見方、考え方として文献としての価値がある。例えばイタリアのユベントスは今では誰でも知っているクラブチームである。この時代は著者の岡野俊一郎が世界の情報の取り入れ口であり、先駆者であったので「ジュベンタス」として紹介したりしている。

 

この本の最後に付録として「1968年度・日本サッカーリーグ選手一覧表」がある。JFLが発足して4年目で8チームの選手の中に、韮高出身の先輩の名前を確認できた。

古河電気サッカー部 雨宮勝己

八幡製鉄サッカー部 向山正彦・清水美三

日本鋼管サッカー部 中島三紀男

名古屋相互銀行サッカー部 横森正哉

 

史書に値する本に、韮高サッカー部の選手として名前が載っていることはとても名誉なことであり、伝統の匂いがプンプンとして心地よい。個人的には小学校時代から現在まで、雨宮勝己さんに目をかけてもらっていて至極光栄であるので、名前を発見できて単純にうれしい。(脱線するけれど)この当時の古河電機のメンバーがすごすぎる。GKは保坂司さん、宮本征勝川淵三郎桑原隆八重樫茂生と日本のサッカーをその後けん引していくメンバーである。

 

本を読まなくても、本を知っているだけで、サッカーインテリジェンスが光る価値がある本である。

 

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