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『サッカー選手のためのメンタルトレーニング』

サッカー本 0083

 

『サッカー選手のためのメンタルトレーニング』

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著 者 高妻容一

発行所 TBSブリタニカ

2002年4月4日発行

 

著者は日本の中でも先駆けてメンタルトレーニングの重要性を説いてきた第一人者である。現在でもメンタルトレーニングをそれほど重要視していない日本のサッカーの実状があるけれど、著者の高妻容一はこの時点でメンタルトレーニングを学び始めて25年が経っていて、積極的にメンタルトレーニングを取り入れてきた。

 

日本の多くのコーチたちは、メンタル面が重要であるとか選手の精神力強化が試合の勝敗を決めるとか、当たり前のように発言するにもかかわらず、そのメンタル面を強化するにはどうすればいいのかがわからないまま、結局は「根性」「気合」「必死」「精神力」など抽象的な言葉で指導し、古臭い精神主義的なトレーニングを押しつけてきました。彼らは、「怒る」「説教をする」「追い込む」「罰を与える」「気合いを入れる」など経験的な(多くは自分の経験した)指導法を踏襲し、その方法が良いと信じ(これしか知らない)、ひたすらハードな練習を繰り返し課すという、選手の「心」(気持ち、感情、考え方)を無視した非人道的なやり方で、選手たちを指導してきました。

 

面白いことに、この本は日本で行われたワールドカップの前に出された本で、内容は日本サッカー協会が著者のメンタルトレーニングを採用しなかったことに対しての恨み節のような内容も書かれている。日本サッカー協会に自分を売り込んだにもかかわらず、メンタルトレーニングを自国開催の日本代表に取り入れられなかった。そのため9章からなるこの本の第4章から第6章までははっきり言って、厭味ったらしい文章と内容になっている(ように思える)。

 

メンタルトレーニング関連の本は、戦術本やトレーニング本に比べ、それほど多くはないにせよ出版されている。様々な切り口からサッカー上達へのアプローチは必要であるので、このようなメンタルトレーニングの先駆けの本は発売から20年以上経った今では、歴史書としても読む価値があり、また普遍的なメンタルへのアプローチは今でも変わっていないと思える内容もあり貴重である。

 

現代のサッカー選手は、メンタルトレーニングから入り、昔の時代の「根性」とか「気合いとか「説教」なんかを体で学んでいった方がいいかもしれない。頭でっかちで、ちょっとのことで心が折れてしまう現代の選手は、まずはメンタルトレーニングを理解、実践し、試合に活かすことが必要である。勝負の厳しさは自分が思っている以上に厳しいことを理解しなければならない。