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サッカー新聞『エル・ゴラッソ』休刊

サッカー新聞『エル・ゴラッソ』休刊

 

日本初のサッカー専門新聞として2004年10月に創刊された『エル・ゴラッソ』が、2023年5月31日号の配達を持って休刊した。新聞紙面から電子版への完全移行となる。

我が家も『エル・ゴラッソ』の宅配購読をしてから長い年月が経つ。どれくらい前からは正確には分からないけれど、10年近くは購読していると思われる。山梨の韮崎に週3回(翌日配達地域であったものの)、ポストにピンク色の新聞が入っていた。よく考えると、素晴らしいことだった。

朝起きて新聞を家の中に入れること、コーヒーを飲みながら紙面をめくること、といった日常の些細な行動様式は失われた。特別な試合前、試合後の『エルゴラ』に目を通すことは、楽しみの1つだった。試合の予想と試合後の論評は、首をかしげるものもあれば、なるほどとうならせるものもあり、幅広いサッカー観を養わせてもらった。

ここ数年のライフスタイルの変化、デジタルメディアの普及の速度が増す中での『エルゴラ』休刊は仕方がない。PCやスマホで同じ情報をより早く受け取ることができる一方で、やはりページをめくる指の感触だったり、目に入ってくる質感だったり、新聞そのものの存在を味わうことができないのは淋しい。そのような生活習慣が染みついている旧態依然のサッカーファンは、新しい時代へ馴染んでいかなければならない(?)。

サッカー新聞『エル・ゴラッソ』の1つの時代は終わった。近未来は文字や写真より、よりリアルな動画配信がさらに勢力を拡大してくる。ソーシャルメディアの時代、あえてそれと距離を置き、アナログの生活の中でサッカーとの関わりを模索するのも面白いのではないかと思えたりする。すべてがオンラインの生活は疲れるし、あたたかみを感じられない。現代社会とサッカーの関係を考える機会かもしれない。またはサッカーというフィルターを通して、現代社会とのかかわり方を考える機会なのかもしれない。
エルゴラ』休刊をタイミングとして、時代がどう変わったか(どう変わっていくか)、自分がどう変わったか(どう変わっていくか)をしばし立ち止まって思案したい。