サッカー本 0071
『マラドーナ自伝』
監 修 金子達仁
訳 者 藤坂ガルシア千鶴
発行所 幻冬舎
2002年6月10日発行
25日、マラドーナが60歳で死去した。衝撃的なニュースであった。マラドーナの死を悼み、この本を紹介する。
タイトルの通り「マラドーナの自伝」である。幼少期からのマラドーナのサッカー人生が綴られている。アルヘンチノス・ジュニオルズから始まり、ワールドユース日本大会、ボカ入団、ワールドカップスペイン大会、ナポリ時代、メキシコワールドカップ、イタリアワールドカップ、最後のワールドカップアメリカ大会とマラドーナの回想が時系列的に語られている。
本の終盤では100人の選手の名前を挙げ、1人1人の選手について想い出や選手の評価をしている。その99人目に中田英寿が挙げられている。あとがきというか解説というか金子達仁氏の『サッカーが好きでたまらない子供』という書き下ろしがこの本の最後にある。
いや、驚いたの何のって。本書が最初から日本の読者に向けて書かれたというのであれば、話はわかる。しかし、これは基本的にアルゼンチン人がアルゼンチン人のために書かれた本なのである。そこに中田英寿が登場するとは思わなかった。~略
すっかり舞い上がってしまった僕は、すぐに館野さんに「何が何でも版権を取ってください。この部分だけでも、日本のサッカーファンは絶対に読みたいはずです」と力説した。
この本の文体は、『ライ麦畑でつかまえて』の主人公、ホールデン・コールフィールドの語り口調に似ている。僕の勝手なイメージからマラドーナを想像しているので、なんとなく重なり合わせてしまう。そのことが、たくさんの超有名なサッカー選手の自伝と異なる趣を演出している。またページ数も数あるサッカー本に比べると、総ページ473Pと読み応えのある分厚い本となっている。
このような素晴らしい本が、日本語訳されて、じっくりと読むことができることは、大きな幸せの1つである。
最後の章「YO SOY EL DIEGO」でマラドーナは熱い想いを語っている。
代表チームでプレーすることが、僕の一番の誇りだった。いつだって、そうだった。所属していたクラブで何百万ドル払ってもらおうと。比べられるものなんて、何ひとつないんだ。だって代表チームの価値は金と比べられない、栄光なのだから。そのことを、今の、今後の選手たちはしっかり頭に入れなければならない。半端な気持ちじゃ、アルゼンチン・サッカーの神秘とセレステ・イ・ブランカのシャツを着ることはできないとね。