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第101回全国高校サッカー選手権大会 私感

第101回全国高校サッカー選手権大会 私感

 

第101回全国高校サッカー選手権大会の決勝は、岡山学芸館が東山を3-1で退け初優勝を果たした。試合の展開、内容、プレーの質はおいておいて、何より良かったことは、スタンドで大声を出してピッチに立つ選手を応援できたことである。

「選手達俺らの声がきこえるだろ~」という高校生らしいメッセージ性のある応援ができたことは、ピッチに立つ選手、スタンドで声を出す部員共に素晴らしく良かったことだった。現在の3年生は1年生からコロナ渦中にあって、思うようなトレーニングや活動を出来なかった世代である。選手権という最後の大会で一体感を味わえたことは、見ている者にとっても正直うれしいことだった。

 

昨年の大会に引き続き、ロングスローは有効だった。決勝もロングスローからの得点があり、高校生ならではのゴール前の攻防だった。前評判の高いチーム、自分たちのスタイルを貫くチームが勝てないのが高校サッカーであり、選手権の怖さである。良いサッカーをしているからといって、必ずしも良い結果に結びつくとは限らず、ちょっとしたミスや偶然性に結果が大きく左右されるのも、選手権の醍醐味でもある。

 

僕の予想した試合結果は、決勝に始まり準決勝2試合も合わせ、90%以上の確率で見事に外れた。ほぼ勝つと思っていたチームが負けたと言っていい。今大会は、何と言ってもPKの多さは格別だった。W杯の日本-クロアチアから始まり、決勝のアルゼンチン-フランスまで、選手権のPK戦の多さを予言するような流れがあるかのようだった。

年末の1回戦16試合、2回戦16試合は共に2試合(合計4試合)しかなかったPKだった。それが新しい年になって3回戦8試合中4試合、準々決勝4試合中2試合と、半分の試合がPK戦での決着となった。準決勝においては2試合がPK戦にまでもつれ込んだ。15試合中8試合がPK戦に突入するとは、誰も予想ができない内容と結果だった。

 

サッカー協会の選手権レポート、分析が楽しみではある。その前に私的な感想を書き留める。印象としては、チームとしての守備戦術が整備され、共有できているチームが多くなり、そういったチームが県大会を勝ち抜いてきているということである。まずは失点をされないチーム作りをした高校がPK戦に至っているような気がする。ポゼッション率は劣っていても、守備意識が高く、守備戦術が浸透しているチームが勝ち上がってきている。意思統一された守備ブロック、ボールを奪うための限定と誘導、ラインコントロール、連動したプレッシングの強度、ペナルティーエリア内でのゾーンとマンツーの使い分けなど、組織的な守備ができれば、そう簡単に点は獲られない。超高校級、J入団内定の攻撃的選手でも、組織的な守備の前では個の力によるプレーに限界があった。各ポジションの守備の役割の理解と遂行に加え、良いCBと良いGKがいるチームはさらに強固な守備を構築していた。しばらくは高校サッカーは守備がしっかりとしているチームが、トーナメントを勝ち上がる確率が高い傾向が続くような予感さえする。

 

勝手な見解による高校サッカーの流れから、来年は韮高もかなりチャンスがあるといえる(韮高にチャンスがあるということは全国どこの高校もチャンスがある)。相手ボールの時は、時間とスペースを与えず、数的優位を作り、組織的なプレッシングとブロックを作れば、点は獲れないにしても点を獲られることはない。得点や失点、予測不可能なプレーに対しても、一喜一憂せず冷静な振る舞いができるクレバーな選手がいれば、さらにチームは強くなる。

 

まだ分析はしていないけれど、フリーキックからの得点は(ゴール前で不用意なファールをしなくなったこともあって)少なくなり、コーナーキックからの得点も減少したような感覚である。複数得点2点差以上の試合も(やはり分析はしていないけれど)減ったのではないかという感覚である。

 

スペイン、バルセロナのポジェッションサッカーの功績は、守備戦術の進化を加速させた事だと今では言うことができる。世界のサッカーの潮流が高校サッカーにも色濃く反映される。速くて強いだけでは通用しない時代が到来している。個の力だけでも、上手いだけでも、サッカーは勝てるわけではない。高校サッカーは次の100年、新しい100年に向かっている。「NEXT1∞」というキャチコピーも良かった。中村俊輔の言葉も近年最高だった。中村俊輔の言葉通りであると思う。