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『プレーモデルの教科書』

サッカー本 0075

 

『プレーモデルの教科書』

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著 者 濵吉正則

発行所 株式会社カンゼン

2021年1月18日発行

 

発売されて間もない最新刊である。

サッカーは進化している。かみ砕いて言えば、サッカーに対する人間の考え方やアプローチの仕方が進化している。ヨーロッパから入ってくる新しいサッカー理論を盲信しないで、客観的に冷静に学ぶことは必要である。ポジショナルプレー、戦術的ピリオダイゼーション、デュエル、インテンシティー、ゲーゲンプレッシング、ストーミングと新用語が次々と輸入されている。

ここ2、3年で「プレーモデル」という言葉をよく聞くようになった。この本はタイトル通り「プレーモデル」について書かれた本である。現代サッカーはプレースピードやテンポが上がり、プレー強度も増し、時間的、空間的に制約された中で試合が進む。そのような状況の中で、「プレーモデル」の概念を分かりやすく解説し、細部まで体系づけていることがこの本の特色である。様々なプレーモデルの解釈がある中で、この本は次のように定義している。

監督やクラブのフィロソフィーを基に、攻守のプレー原則に従って共通認識を持ったプレーを行い、個々の力を引き出すこと。選手個々のゲームインテリジェンスを高め、選手間のプレーの共通のアイデアとクリエイティブさを引き出すこと

 

ポジションや監督から前もって出された指示やパターン化されたプレーの判断ではなく、プレーの状況によって決まる「状況による決定」という考え方がますます重要になっています。「プレーモデル=型にはめることではない」という考え方です。プレーモデル・プレー原則における規律と即興の関係は「(規律)6:4(即興)」で規律が優位です。

 

現代サッカーでは、原則に従った自由の中で、フィジカル面は限界に近いところまで達していて、ここからさらにプレースピードを上げるとしたら、認知の改善、または認知能力の高い選手の発掘が必要であるとのことである。例えばボールを奪った後の受ける動きやボールを持った時の優先順位などは、認知のスピードが上がり、プレーモデルが構築されていると大きく変わる。

 

ゲームの中で、良いプレー、悪いプレーとは?判断は?それらは状況に応じて変わってきます。プレーモデルからプレー原則といった、基準を設定することで、プレーの状況において、判断の良い悪いが見分けられるようになり、チームとして良い判断ができるようになります。 

 

本の中にはたくさんのマトリクス図があり、言語化、可視化されていてとても分かりやすい。分かりやすいゆえに抽象化されすぎている部分もあるけれど、自分なりに具体例を想像して勉強することができる。

未来のサッカーは、人間のフィジカルの進化というより、ゲームインテリジェンスがさらに求められると思わせる本である。

 

【参考】

「プレーモデル」を語る前に言葉の定義からはじめよう/TSAが考えるプレーモデルの作り方とプレー原則の設定 | COACH UNITED(コーチ・ユナイテッド)

 

スペインサッカーから伝わる「プレーモデル」の言葉の真意を読み解く | Súper Crack 【スーペル・クラック】 (super-crack.com)