サッカー本 0069
『サッカーは「システム」では勝てない』
データがもたらす新戦略時代
著 者 庄司 悟
発行所 KKベストセラーズ
2014年11月20日発行
2014年ブラジルワールドカップ後に発売された本である。今では当たり前のデータを、ドイツはすでに活用し試合に活かし優勝した。そのデータ活用術が詳しく書かれている。
2010年南アフリカ大会の決勝のスペイン-オランダ。2014年ブラジル大会のグループリーグでのスペイン-オランダの試合のデータ比較とその分析が記されているが、その先見性に感服する。
今でも記憶に刻まれているブラジル大会のスペイン-オランダ戦は、ポジェッション至上主義が終わりを告げた試合だった。
「ポジェッションサッカー」が「勝てるサッカー」と言うことができない時代に突入したからである。~略
4年前はボールを支配して攻めることが勝利への近道だったのに対し、ブラジルワールドカップではそれが勝敗を分けるポイントにはならなかったということだ。~略
スポットライトを浴びたのは「ポジェッション」の対極にある「カウンター」サッカーだった。
ではどのような切り口でデータを分析し活用しているのか。走行距離は支配率と同様に現在も重宝されているけれど、「どれだけ走ったかでサッカーの内容、勝敗が決まることはない」し、それは単なる数字でしかない。
走行距離を細分化すると
自ボールでの走行距離
敵ボールでの走行距離
どちらのボールでもない時の走行距離
となる。さらに走りの質も分析できる。
スプリント 時速24.48km以上
ハイスピード 時速18km~24.47未満)
ロースピード 時速18km未満
となる。パス成功率についても、前、横、後ろ、ショート(10m未満)、ミドル(10m~30m未満)ロング(30m以上)があり、縦パス成功率も分析データとなる。
走行距離をパス成功率で割ると、パス1本を受けるために走った距離
がでる。その他、
シュート1本打つためにつないだパスの本数
枠内シュート率
ドリブルでペナルティーエリアに侵入した回数
空中戦、地上戦での1対1の勝率
GK枠内セーブ率
などがある。本書のタイトル通り、サッカーはシステムや監督だけでは勝てない時代となった。現在ではアマチュアチームでさえビデオ撮影は当たり前となり、上記のデータを一般人がパソコンで分析できるアプリも近い将来には登場すると思っている。ただその分析能力、解析データを活用できなければ、ただの数字となる。
「数字」だけをいくら提示しても、それはピッチの上におけるアクションや結果に対して何も意味を持たないのである。それを有機的に並び替え、掛け合わせてこそ、その試合の分析や対策に対して有用であり、ピッチの上で起きたことを説明しうる「データ」となるわけだ。
データが氾濫する時代が訪れるであろう反面、人間の眼、そして感覚、直観は衰えることはないと思っている。選手を観ていれば、データを見なくても調子が良い悪いは分かる。この本に書いてあるデータをサブテキストとして活用する監督なりスタッフがいるチームがこれからは台頭してくるのではないかと思っている。