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『サッカー茶柱観測所』

サッカー本 0064

 

『サッカー茶柱観測所』

 

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著 者 えのきどいちろう

発行所 駒草出版

2007年5月15日発行

 

著者はサッカーとはそれほど近くない距離にいたコラムニストであり、2002年の日韓ワールドカップを機に、週刊サッカーマガジンで「サッカー茶柱観測所」というコラムを連載し始めた。02~06年までの時事コラムをまとめたのがこの本である。

当時、サッカーマガジン連載のこのコラムは(今思うと)、多くのサッカーファンを引き付けたのだと思う。特にワールドカップをきっかけにサッカーに興味を持ち始めた人たちや、比較的サッカー観戦歴が浅い人には、著者のサッカーに対する視線は受け入れやすかったかもしれない。絶妙な敷居の低さが文章ににじみ出ている。

またコアなサッカーファンに対してもその視点の違いとそこからくる疑問なり主張は「ああ、そういった見方もあるよな」的に好意的に受け入れられたと思う。人種の違うサッカー好きの仲間の意見として尊重された感じがする。囲み記事のような寿命の短い記事がこうやって本として出版されたということは、文章の中に何かしら訴えかけるものが存在し、サッカーそのものに徐々にはまっていく著者の足跡が追える楽しさがあるからではないか。

Jリーグが2シーズン制だった時代のこと。ジェフユナイテッド千葉がまだジェフユナイテッド市原という名前でホームゲームが市原臨海だったこと。J SPORTSがJ1全試合中継を始めたこと。スカパーのチャンピオンズリーグ独占放送やWOWOWのリーガ・エスパニューラ独占放送で話題になったことなど、同時代を生きてきた人にとっては思いがけない懐かしさがこみ上げる。VF甲府も大木監督時代の急成長だった時で、面白いサッカーをすることで注目されていたので、コラムにも何回も取り上げられている。

 

「サッカー界、握手多くない?」

この面白さが読者に100パーセント伝わらないのが残念だ。いや、僕は1年とちょっとスカパーでサッカー番組を担当していて、ホントにサッカー界の人は握手するなぁと思っていた。数えきれないくらい沢山のゲストをお呼びしたが、とにかく顔を合わせると握手である。で、番組終わって別れるとき握手。~略~

書いていて思い出したが三浦俊也さんは知人のお通夜のとき、真っ暗な駐車場でお見かけして、半信半疑で「三浦さん!?」と半疑問形で声をかけたら答えは握手だったのである。

 

僕の考えを言うと、サッカー選手は集合写真を撮りすぎである。~略~

それからその知人と「サッカー選手ほど集合写真慣れしてる人はいないんじゃないか」などと盛り上がった。知人の結婚式で集合写真を撮ったときも、皆、自然に前後に並び、そして無意味に上下動していたらしい。

 

全身の力を抜いて油断して読んでいると、予期せぬところで力が入ったりする。また軽い文章の中に重たい内容が含まれていて、必然的に本としての体裁を兼ね備えたコラム集である。