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『夢想するサッカー狂の書斎 ~僕の採点表から』

5月サッカー本

『夢想するサッカー狂の書斎 ~僕の採点表から』

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著 者 佐山一郎

発行所 カンゼン
2013年9月26日発行 

 

この本の内容は、2002年から11年間に発行されたサッカー本、153冊を書評している。まず僕が驚くことは、毎年、毎年、多くのサッカー本が出版されているとこである。サッカー人にしてみれば、とてもうれしいことである。さらに驚く事には、多い時に2カ月で30冊以上の「サッカー本」が出版されている。そしてついにこのような本が現れた。映画や音楽、小説などのガイドブック、書評本はたくさんあるけれど、サッカーに限って言えば、そのようなガイドブックは存在しなかった。まず書評するほどの本が出版されていなかったからである。しかし時代は変わった。
 
第Ⅰ部 球を捨てよ、本屋さんへ行こう

第Ⅱ部 02年から06年まで

第Ⅲ部 オシムの時代から10年まで

第Ⅳ部 サッカー版「ぼくの採点表」全88冊 2012~2013
 
著者は書いている。

活字離れをいわれながらも、依然として日本人は活字文化好きなんです。本当はイギリスと並びサッカー関連書大国なのに、その自覚も自信もない。実に奇妙なことだと思います。

試合は常に消費されていきます。でも良いサッカー本は時空を超えるんです。時間的余裕のある若い人たち中心にもう少しマニアックになってもらいたいなと世界中の本屋さんをうろつく度に思います。

隠れた名著やサッカー写真集、代表本、育成書、様々な分類の本の情報が詰まっている。奥行きがあり、知性を感じるサッカーをするには、トレーニングだけでは実現できない。このような本を手に取り、如何に自分が限定された小さな世界でサッカーをしているかを実感して欲しいと思う。
 
この本の中で紹介されている153冊のうち、僕が読了していた本はたった20冊だった。オシム関係、バルサ関係はほぼ読んでいたけれど、日本代表、なでしこ関係は全く読んでいないことが分かった。

クロニクル的にこの本と向き合うと、2002年、日韓ワールドカップ、06ドイツ、10南アフリカとつい先日のような感覚がある。98のフランス、94のアメリカ、90イタリア、86のメキシコ、82スペインと活躍した選手や忘れられない試合が蘇ってくる。

本を読むこと自体はたいしたことはない。ただその行為によって派生する出会いや発見が財産となる。お金やモノが多くなくても、心豊かであるならば、素晴らしい人生になるのではないか。一流は着飾らない。


蹴球に加はらざりし少年に見らるる車輪の下の野の花 
寺山修司